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技能実習制度の「送出し機関」とは?役割・認定要件を解説

送出し機関とは?

送出し機関とは、海外の技能実習生を募集し、日本へ送り出す機関のことです。
条文では、
「技能実習生になろうとする者からの技能実習に係る求職の申込みを適切に本邦の監理団体に取り次ぐことができる者として主務省令で定める要件に適合する者をいう。」
と、されています。

参考: 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則 第二十三条二項六号(一部省略)

技能実習生の母国にあり、技能実習生の就労を日本の技能実習監理団体に取り次ぐのが、「送出し機関」ということです。

関連語句の紹介: 監理団体とは?

監理団体は、外国人労働者を受け入れるための日本の機関です。送出し機関から送り出された技能実習生を預かります。監理団体は、送出し機関と契約を交わし、連携をとります。監理団体になれるのは、商工会、企業団体、公益法人などの非営利団体のみです。

技能実習生の送出し方は2パターンあります。

「団体監理型」

海外の送り出し機関を経て来日した外国人実習生を傘下の企業の元に派遣し、技能実習行います。

「企業単独型」

監理団体を利用せず自社で実習生の受け入れを行い、送出し機関と日本の企業の間で直接雇用をします。

 

監理団体の役割は主に、以下の3つです。

監理

受入れ企業が、計画どおりに技能実習を行っているかどうかの確認、または指導を行います。

技能実習制度の周知

技能実習制度の趣旨、「国際協力に基づいて行われていること」などを周知させます。

監査・報告

技能実習生を受け入れている企業に監査を行い、その結果を入国管理局に報告します。

送出し機関の役割

技能実習生を募集する

送出し機関は日本の受け入れ機関(技能実習生を受け入れる企業)からの人材募集に合わせて、技能実習生を募集します。受け入れ予定の機関は、欲しい人材を指定することができます。性別、年代、学歴などを指定できます。

技能実習生の教育

技能実習生候補を選抜したのち、日本での就業に向けた教育を行います。日本語、日本の文化、現場で必要とされる実技のトレーニングなどが主な内容とされています。その後、最終面接や実技試験を技能実習生候補に受けてもらい、合格者を日本へ送り出します。

日本へ送り出す

技能実習生を日本へ送り出します。この際、送り出し機関と日本の監理団体は連携をとります。連携の目的は、安全な送り出し、技能実習生の実技などの評価報告、ビザの申請手続きです。

技能実習生のケア

日本で就業中の技能実習生に問題が起きたり、トラブルに巻き込まれた場合の対応を送り出し機関が行います。また、技能実習生にとって慣れない環境で就業することになるので、精神面のケアをすることもあります。

帰国した技能実習生の対応

日本での実習期間が終了し、帰国した技能実習生はたいてい、国内で働き始めます。その際の次の仕事先への斡旋を送り出し期間が行います。その他、日本での厚生年金返還などの事務手続きも送り出し期間が行います。

送出し機関の認定要件

送出し機関を運営するには、一定の要件を満たす必要があります。要件は以下のとおりです。

1. 自国または自国の地域の公的機関からの推薦があること。
2. 技能実習制度の趣旨を理解しており、実習候補者を適切に選定し、送り出しができること。
3. 技能実習生などから徴収する手数料や費用に関する算出基準を明確に公表し、技能実習生にそれらを明示して十分に理解させていること。
4. 技能実習を修了して帰国する者に、就職の斡旋などの必要な支援を行うこと。
5. 法務大臣、厚生労働大臣または外国人技能実習機構からの、修了生の技能の移転などに関する調査、技能実習生の保護に関する要請などに応じること。
6. 当該送出し期間またはその役員が、日本または所在国の法令違反で禁固以上の刑に処せられ、刑執行後5年を経過していないものではないこと。
7. 当該送出し機関またはその役員が、過去5年以内に以下の行為をしていないこと。
◯ 技能実習生、その配偶者や親族など、技能実習生と密接な関係を有するものの財産を管理する行為。
◯ 技能実習に係る契約の不履行について、違約金を定める契約や不当に金銭・財産の移転を予定する契約をすること。
◯ 技能実習生に対する暴行、脅迫、自由の制限など、人権を侵害する行為。
◯ 技能実習生に対して、文書・図画の変造や虚偽を行うこと。
8. 技能実習生またはその配偶者、親族などが、「技能実習に関連して財産の管理をされていないこと」、「財産の移転をする契約をしていないこと」を確認していること。
9. 所在国の法令に従って事業を行っていること。

参考: 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則 第二十五条

送出し機関はどこの国にある?

送出し機関は、いったいどこの国にあるのでしょうか?各国の詳細も合わせて紹介していきます。

主な送出し国

中国 260ヶ所

中国の送出し機関は、2種類あります。
・中国国家外国専家局認定送出し機関
・中国中日研修生協力機構認定送出し機関

中国国家外国専家局認定送出し機関は8ヶ所。中国中日研修生協力機構認定送出し機関
は252ヶ所あります。中国は人口が多く、また日本へ就業に来る人が多いため、技能実習の送出し機関がたくさんあります。

フィリピン 305ヶ所

フィリピンには305ヶ所の送出し機関があります。日本ではフィリピン人の実習生が、インバウンド対策として重要視されています。

インドネシア 200ヶ所

インドネシアには200ヶ所の送り出し機関があります。インドネシア、ジャカルタの月給は日本と比べると約10倍の差があります。そのため、日本に出稼ぎに来る人が多いです。

ベトナム 329ヶ所

ベトナムには329ヶ所の送出し機関があります。ベトナムは国内の収入が日本に比べて低いため、出稼ぎに来る人が多いです。

その他、送出し国

インド 27ヶ所

機関名: 全国技能開発公社(NSDC)

ウズベキスタン 222ヶ所

機関名: 雇用・労働関係省(MLSP)

カンボジア 86ヶ所

労働・職業訓練省(MLVT)

スリランカ 62ヶ所

海外雇用省(MFE)、海外雇用庁(SLBFE)

送出し機関を探す時のポイント

日本語教育

技能実習生とともに現場で働くにあたって、日本語でのコミュニケーションが必要です。そのためには、送出し機関による高水準の日本語教育が必要と考えられます。日本の監理団体も、技能実習生来日後にしばらく教育を行います。ですが、短期間で伸ばせる日本語力には限界があります。
やはり、送出し機関による母国での事前教育が重要視されます。日本語教育の水準は、送出し機間の教育担当者と会話することで推察してみましょう。また、電話越しでの会話で、日本語がスラスラ話せるかどうかを確かめてみましょう。

日本に駐在事務所があること

日本に駐在事務所をもっている送出し機関があります。駐在事務所、駐在員の常駐があれば、日本と海外の間で円滑な意思疎通が可能になります。日本国内での就業中などにトラブルがあった場合に、母国との間でスムーズに連携が取れます。駐在事務所の有無は、送出し機関を選ぶときに考慮すべきポイントのひとつです。

管理費は「高い or 安い」で選ばない

数ある送出し機関の間では利用者獲得の競争が起こっています。そのため、提示する費用を下げている送出し機関があります。「費用は安いほうがいい!」と考え、価格だけで機関を選びたくなる気持ちもわかりますが、それは危険です。

管理費が安い送出し機関は、人件費などを削減し、技能実習生ひとりひとりの面倒を見れていない場合が考えられます(※ 安いからといって、サービスの質が必ずしも低いわけではありません)。
価格で検討するのもいいですが、「手厚いサービスがあるかどうか」「技能実習生が快適に就業できる環境が整っているか」を重視して探すようにしましょう。せっかく受け入れることができても、管理環境が整っていなければ、実習生本人も、受入れ企業も辛い思いをすることになります。

制度利用にあたっての注意事項

1. 不正な払い戻し(キックバックの受領)は禁止
監理団体が、監理費に当たらないお金を送出し機関などの関係者から受け取る行為は禁止されています。技能実習法28条に違反することとなります。この場合、監理団体の許可取り消し、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

2. ブローカーの活動は禁止
許可なしに監理事業(実習実施者と技能実習生との間における雇用関係のあっせん、および実習に関する監理を行う事業)を行うこと、いわゆる無許可のブローカー活動は禁止されています。行った場合は、法律上指導監督の対象になります。第三国で行うブローカー活動に関しては、外国人技能実習機構に相談しましょう。

3. 技能実習生のサインが必要な申請書類は、母国語併記が必要
手続きを進めるにあたって、技能実習生本人によるサインが必要な申請書類が出てきます。履歴書、雇用契約書、雇用条件書、待遇に関する重要事項説明書、申告書、準備に関して本国で支払った費用明細書などです。これらについては、母国語併記することが主務省令第68条において求められています。外国人技能実習機構のホームページに母国語併記の書類が掲載されています。各受入れ企業で新しく用意せず、これらの書類を使用することを勧めます。

リンク: OTIT 外国人技能実習機構 HP 

「特定技能」に関する送出し機関の役割とは

2019年4月から新しい在留資格「特定技能」が施行されました。特定技能は日本で就業するための、技能実習制度とは違った新しい在留資格です。
特定技能制度と技能実習制度の違い。この記事に関して言えば、「直接雇用であるか間接雇用であるか」の違いが挙げられます。

特定技能: 「受入れ企業 – 就業する外国人本人」の直接雇用
技能実習制度: 「受入れ企業 – 送出し機関および監理団体 – 就業する外国人本人」

このようになります。それに伴い、制度に関係する機関にも違いがあります。

制度ごとに関係する機関
技能実習制度
送出し機関: 海外で技能実習生候補の募集、教育、受入れ企業の紹介。
監理団体: 現地の送出し機関と連携し、実習生を受入れ企業に派遣する。
受入れ企業: 技能実習生を受け入れ、雇用契約を結ぶ。
労働者(技能実習生): 送出し機関・監理団体を通じて、受入れ企業と有限雇用契約を結ぶ。

特定技能制度
受入れ企業: 外国人労働者と雇用契約を結び、受け入れる。
登録支援機関: 受け入れ機関から業務委託を受け、特定技能外国人への支援を行う。
労働者(特定技能外国人): 受入れ企業と雇用契約を結ぶ。

特定技能制度における送出し機関の役割

特定技能制度における、海外の送出し機関の体制、日本との締結状況は以下のリンクから確認できます。

リンク: JITCO 公益財団法人 国際人材協力機構 HP

制度ごとの送出し機関の役割を見てみましょう。

技能実習制度における送り出し機関の役割
・労働者の募集
・技能実習生への講習
・送り出し

特定技能制度における送り出し機関の役割
・労働者の募集
・日本語能力、技術試験の合否の確認
・日本の企業に紹介

「日本で働く外国人への講習を担当しているかどうか」の違いがあります。特定技能制度では、送出し機関が講習を担当する必要がありません。外国人が日本語・技術に関する試験に合格しているかどうかを確認し、日本の受入れ企業に紹介するだけになります。

まとめると、特定技能外国人を採用する際のプロセスは

1. 海外の送出し機関が、特定技能外国人を募集。
2. 日本語能力および技能水準の試験の合否を、送出し機関が確認する。
3. 日本の受入れ企業へ、外国人を紹介する。
4. 受入れ機関と特定技能外国人の間で、雇用契約を結ぶ。
5. 支援計画の実施(特定技能1号の場合)

特定技能による採用でも、海外の現地で「募集・紹介」を行うのは原則、送出し機関です。国、人数などの詳細によっては、送出し機関が不要な場合もあります。

詳細は、各国の協力覚書で確認できます。

参考:法務省 HP 特定技能に関する二国間の協力覚書

まとめ

今回は、送出し機関について紹介しました。
以前は、技能実習生を送り出すだけの役割でしたが、今では特定技能外国人を送り出す役割も担っています。場合によって役割が変わってきますので、把握しておきましょう。
また、送り出し機関を選ぶ際のポイントも確認しながら、円滑な受け入れをしましょう。