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【技能実習制度】「漁業」の外国人労働者の受入れについて解説

「漁業」の現状

漁業分野では、有効求人倍率が他産業と比較して高水準で推移しており、さらには2020年の新型コロナウイルスの影響により、国産食品の価値が高まり、漁業分野の人材確保がますます重要事項になってきました。

漁業分野の就業者は減少傾向

漁業分野の就業者は、1998年に27万7000人から2017年15万3000人と半減しています。2017年の雇われの就業者は、3年で約1割減少しているほか、漁業分野の有効求人倍率1.57倍、水産養殖作業員2.08倍の状態で求職者より求人が多い状態となっています。

「漁業」の高齢労働者が引退

漁業分野の雇われ就業者の約2割を締めている65歳以上の熟練の高齢労働者が引退していっていることから、今後も人材不足の深刻化が見込まれています。日本の漁業の存続、発展を図り、人々のニーズに応じた水産物を安定的に供給する体制を確保することが必要でしょう。

「漁業」の生産性向上のための取組

①生産性の高い漁船の導入
②海洋環境の迅速な把握
③AI を活用した漁場探査の効率化等、最先端技術の開発、実装
④「浜」単位での先進的な取組事例の全国普及
⑤自動給餌機や自動カキ剥き機の導入等による作業の効率化などを推進

水産庁の支援では、以上のような生産性の向上の取組をすることで、漁業分野の就労者が減少する中でも漁業者1人当たりの生産量が、2011年の25.1 トンから、2016年の27.2 トンへと増加しています。

人材確保のための取組

水産庁では、漁業就業相談会や漁業体験、長期研修などの業界の取組を支援することで、就業者が減少する中、毎年 2,000 人近い新規就業者を確保している状況です。

しかしながら、現在も就業人数は減少の一途をたどっており、日本政府は5年の間に約2万人が不足すると予想しています。そこで、「技能実習制度」、「特定技能制度」を利用した外国人労働者の雇用が重要視されてきています。

「技能実習制度」と「特定技能制度」とは

「技能実習制度」とは、日本企業が発展途上国の若者を技能実習生として受け入れ、実務を通じて習得した技術や知識を母国の経済発展に役立てることを目的とした公的制度です。
上記のような国際貢献がもともとの目的となっていますが、人手不足が深刻化する産業においては、外国人技能実習生を受け入れることで労働力不足をカバーできるといった側面もあります。

もう一つの「特定技能制度」とは、2019年4月より導入された新しい在留資格です。日本国内において人手不足が深刻化する14業種で、労働力の獲得を目的として外国人の就労が解禁されました。

「技能実習制度」と「特定技能制度」は共に漁業分野での外国人労働者の人材確保を行っています。

技能実習の「漁業分野」の業務内容

技能実習の「漁業分野」の業務内容として、漁船漁業は、かつお一本釣り漁業、延縄漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、曳網漁業、刺し網漁業、定置網漁業、かに・えびかご漁業、棒受網漁業の9つの作業で区別されます。養殖業はホタテガイ・マガキ養殖作業の1つ職種となっていますので、合計で2職種9作業となっています。

漁業関係図(2職種9作業)

職種名 作業名
漁船漁業 かつお一本釣り漁業
延縄漁業
いか釣り漁業
まき網漁業
曳網漁業
刺し網漁業
定置網漁業
かに・えびかご漁業
棒受網漁業
養殖業 ホタテガイ・マガキ養殖作業

漁船漁業

技能実習生は漁船漁業に関して、必須業務、安全衛生業務、関連業務、周辺業務の区分に応じて、それぞれ条件に適合させることが必要です。

 

必須業務

①漁具の製作・補修作業

②漁具・漁労機械の操作作業

③漁獲物の処理作業

 

安全衛生業務

① 雇入れ時の安全衛生教育

② 乗船時の安全衛生教育

③ 作業開始前の安全装置等の点検作業

④ 漁船漁業職種に必要な整理整頓作業

⑤ 漁船漁業職種の作業用機械および周囲の安全確認作業

⑥ 保護具の着用と服装の安全点検・収納作業

⑦ 保護具の装着、収納の必要性理解および指導の実施

⑧ 安全装置の使用等による安全作業

⑨ 労働衛生上の有害性を防止するための作業

⑩ 異常時および事故発生時の応急処置作業の習得

⑪ 操業時の事故(転倒、海中転落、落下物、噛みつかれ等)防止

⑫ 消火器による初期消火作業

 

関連業務

①水揚げ作業の準備

②水揚げ作業(陸上選別を含む。)

③陸上での漁具製作・補修作業

④陸上での漁労機器点検作業

 

周辺業務

①出港時の漁具積み込み作業

②帰港時の漁具積み下ろし作業

③船体補修作業

かつお一本釣り漁業

「かつお一本釣り漁業」とは一本釣りによりカツオなどを捕獲する漁業です。

季節によって住処を移すカツオを追うため、漁場が季節によって変わります。カツオの「一本釣り」は通常の手で針をはずす手法ではなく、頭上に跳ね上げた勢いではずす「跳ね釣り」という方法が主流で、3年の修行が必要とされています。

数時間から1日で漁場に着き、釣り上げは10分から1時間となっています。カツオの群れに生きた「カタクチイワシ」を投げ入れ、船から散水することで、餌の小魚がたくさんいるように見せます。

釣り上げが終わると、次の群れを追って船を移動していきます。釣った魚の水揚げが済むと、すぐに次の操業の準備がはじまり、早い時は30分ほどで次の漁に出航します。漁場への往復を含め、一操業あたりの航海は30〜80日におよびます。

まぐろはえ縄漁業

「まぐろはえ縄漁業」とはマグロなどを捕獲する漁業です。

一本の長い縄「幹縄(みきなわ)」に、約3,000本の釣り針が付いた縄「枝縄(えだなわ)」を漁場に設置して、まぐろが釣り針にかかるのを待ちます。幹縄の長さは、全長100kmから150km程あります。

漁船の1日は、延縄を海中に投げ入れる投縄で始まります。投縄は、無線で位置を知らせるラジオブイや、浮き玉を幹縄に付けつつ、枝縄にある釣り針に、いかやいわしなどの餌を付けて海中に投入していく作業をします。

いか釣り漁業

「いか釣り漁業」とはイカを捕獲する漁業です。

自動いか釣り機により、イカ餌(疑似餌)を海中に投入し、引き上げるときに、イカを漁獲します。夜間の場合は、魚灯を点灯させ、光に集まるイカを漁獲します。

自動いか釣り機、船内冷凍設備の精度向上により、釣り上げたイカを一尾ずつ冷凍し、高品質な急速凍結のIQF製品(一尾凍結 Individual Quick Frozen)と、加工原料向けのブロック冷凍を主に利用しています。

まき網漁業

「まき網漁業」とは魚の群れを探し、網で囲い込んで獲る漁業です。

それぞれの役割をもつ数隻の船が船団を組んで漁をするため、チームワークが必要となっています。
一般的な1船団は網船1隻、灯船2隻または1隻、運搬船2隻で構成されており、約50人の人数がいます。

鳥レーダー、ソナー、魚群探知機といった「漁撈機器」を利用した魚群探索や、双眼鏡、ヘリコプターによる目視の魚群探索によって魚群を発見していきます。1回の操業で漁獲される魚は0トン~200トン程になり、捕られた魚は船内でブライン凍結(冷凍保存)され、満船になると日本の港に帰ってきて水揚げされます。

底びき網漁業

「底びき網漁業」とは、漁船から伸ばしたひき綱(ワイヤーなど)に連結した漁網をひいて航行し、漁獲を行う漁法です。

漁獲対象種は、海域によって異なりますが、カレイ、ホッケ、カニ、エビなど漁獲物は多彩です。
底びき網漁業の操業形態は次のように分類されます。

「2そう曳き」

1つの漁網を2隻の漁船が一定の間隔を開け、並んで行う漁法です。

「1そう曳き」(トロール)

網口を広げるためのオッターボード(底引網の網口を水の抵抗を利用して左右に開かせるための網口開口板)を網口両端に設置し、1隻の漁船で行う漁法です。

「2そう曵き」(かけまわし)

1つの漁網を2隻の漁船が一定の間隔を開け、並んで行う漁法です。

流し網漁業

「流し網漁業」とは、「刺し網」を固定せず、海面に漂わせる漁法です。
「刺し網」とは網に刺さったり、絡まったりした魚を捕獲するものになります。泳いできた魚が網に絡み付いて漁獲されるため、サケ・マスなど回遊性の魚を対象にしています。

定置網漁業

「定置網漁業」とは、文字通り海中の定まった場所に網を設置し、回遊する魚群を誘い込むことで漁獲する漁業です。

「巻き網」などの能動的に魚を追いかける漁法と異なり、過剰漁獲に陥りにくくなり、継続的な漁業が可能な環境にやさしい漁法とも言われています。
また、漁場が沿岸付近に固定されているため、毎朝に新鮮な魚を供給する事が可能です。

定置網漁でとれる魚は、一般的に「浮魚」と呼ばれる魚となっています。「浮魚」とは海水面から水深数10メートルから100メートル程の、海底から離れたところを泳いで移動する魚の事です。「浮魚」のイワシ、アジ、タイ、ブリ、イカなどを獲ることができます。

かに・えびかご漁業作業

「かご漁船」とは、通常えさを取り付けたかごを海底に仕掛け、匂いにつられて入ってきたカニ、エビなどの生物を捕る漁法です。
えさには、冷凍サバ、ホッケ、小さなソウダガツオ、シイラ、ベニズワイの水ガニなどが使用されます。

捕獲対象とする魚種やサイズ、仕掛ける場所によって、用いるかごの形や網目の大きさが異なっています。形も円筒、円錐台、直方体、かまぼこ形などさまざまあります。資源保護のため、小さな個体はかごの網目から逃げることができるような工夫が施されています。

棒受網漁業

「棒受網漁業」とは、海中に敷設した網の上に、サーチライトで魚群を誘導して集めてすくい獲る漁法です。対象魚種として、特にサンマ漁に用いられることが多く、あじ、さば、いわし、白子などもあります。

その歴史は1940年代に遡り、サンマが光に集まる習性を利用し「火」を使った棒受網には、それまでの流網とは違い、撒き餌も使わず漁具の操作が簡単で、魚体を傷つけないという利点がありました。戦後にも、食糧・資材不足という背景の中、「棒受網漁業」は急速に発展・普及していきました。

養殖業

技能実習生は養殖業に関して、必須業務、安全衛生業務、関連業務、周辺業務の区分に応じて、それぞれ条件に適合させることが必要です。

必須業務

①ほたてがいの取扱い作業

②漁具の製作・補修作業

③漁具の整理・整頓作業

④安全作業

 

安全衛生業務

① 雇入れ時等の安全衛生教育

② 作業開始前の安全装置等の点検作業

③ 養殖業職種に必要な整理整頓作業

④ 養殖業職種の作業用機械および周囲の安全確認作業

⑤ 保護具(救命胴衣、安全帽、安全ベルト、命綱、安全靴、作業用救命衣等)の着用と服装の安全点検作業

⑥ 安全装置の使用等による安全作業

⑦ 労働衛生上の有害性を防止するための作業

⑧ 異常時の応急措置を修得するための作業

 

関連業務

① 養殖管理作業

② 害敵駆除作業

③ 付着生物駆除作業

④ 育苗養殖作業

⑤ 水温・水質管理作業

⑥ 養殖用機械、設備、器工具等の清掃作業

⑦ 養殖用機械、設備、器工具等の管理・保守作業

⑧ 海上作業(採苗器稚貝付着状況・半成貝生育状況調査等)

⑨ 食品衛生上の管理(貝毒)、流通の管理作業

⑩ 出荷前品質保持作業

⑪ 漁場環境整備作業

⑫ 同一養殖業者におけるまがき養殖作業(ただし、ほたてがい養殖作業と重複する作業は除く。)

 

周辺業務

① 自家取得した原材料を使用した製造・加工作業(専従者がいる場合は該当しない。)

② 貝類の構内運搬作業

③ 梱包・出荷作業

④ ほたてがいの剥き身作業

 

ホタテガイ・マガキ養殖作業

「養殖作業」とは、一定の水域を専有して、ホタテガイの種苗を採取し成貝まで成長させるなど、人工的に管理、育成する作業です。

現在、国内で養殖されている貝類としては、カキ類、ホタテ、アサリ、アワビなど様々な種類があります。
2017年においては、国内で養殖されている貝類約31万トンのうち、カキ類が約17万4千トン、ホタテが約13万5千トンと大部分を占めていることになります。

カキ類の養殖方法として、「いかだ式垂下養殖」は海面に浮かべたイカダに種カキを付着させた貝殻を吊るした針金を吊り下げて養殖する方法です。「かご垂下養殖」は稚貝が入った籠を吊り下げて育成する方法が一般的です。

ホタテの養殖方法として「耳づり養殖」は貝殻に穴をあけてテグスで吊り下げる方法です。「かご垂下養殖」は海に張ったロープに稚貝の入った籠を吊り下げて育成する方法が一般的となっています。

まとめ

・漁業分野の就業者は減少傾向
・「技能実習制度」と「特定技能制度」は漁業分野での外国人労働者の就労を行っている
・技能実習の「漁業」は漁船漁業・養殖業の2職種9作業ある

これからの人手不足の解消のため、外国人労働者の活躍に期待したいところです。技能実習制度に関するポイントを把握し、漁業分野の発展を目指していきましょう。