全般

外国人社員は日本人と価値観も違うため、育成していくのは難しいものです。そこで、この記事では、外国人社員の教育についてマネジメントのコツ、退職を防ぐ方法、日本語能力を向上させる方法、仕事を覚えてもらうコツなどについて解説します。

転職に対する考え方の違い

日本人は、転職したいと思っても、最低3年は同じ職場にとどまるべき、などと言われます。「石の上にも3年」ということわざにもあるとおり、一般的に3年以下の実務経験が評価されにくいと考えられているためです。

外国人にとってもこのような考え方が一般的とは限りません。働いている会社で学ぶことがなく、成長ができないと考えたら、見切りをつけて辞めるのが非常に早い傾向にあります。働いている会社より、もっと良い条件の職場が見つかった場合や、直属の上司に恵まれない場合も、さっさと辞めていきます。

そのため、採用した外国人従業員に長く働いてもらうには、会社で成長できるチャンスを与えることが大切です。また、外国人従業員にとって信頼と尊敬ができる上司であれば転職しにくくなるでしょう。

価値観を理解しよう

外国人従業員を理解しようと思ったら、外国人の国の歴史、政治的な背景を知る必要があります。そうすることで、考え方や行動の特徴がわかってくるようになります。そして、外国人の価値観を理解した上で、臨機応変に接するようにしましょう。

指示の出し方、叱るタイミング、褒め方などは日本人と異なることを踏まえて、相手のプライドを傷つけないように気をつけましょう。

例えば、フィリピンやベトナムなどの東南アジア圏の人は人前で叱ってはいけません。人前で叱った場合はその人の尊厳を侮辱すると考えられてしまいます。そのため、職場で指導をするときには、個室に呼び出したりするなどの配慮が必要な場合もあります。

指示を明確にする

日本人であっても、仕事での指示が不明確だったり抽象的だったりすると仕事に支障を出すことがあります。外国人に対しても同じことです。指示は、具体的で明確にすることが必要です。

外国人にとっては、日本語は他の国の言葉よりも難しいと考えられています。アルファベットなどの一種類だけを使う外国語と違い、日本語にはひらがな、カタカナ、漢字の3種類も文字があるため覚えづらいと考えられています。発音が同じ言葉でも、意味が異なる言葉も多くあります。日本人が状況で判断できる言葉でも、外国人にはなかなか理解できない言葉もあります。

外国人にとって難しい日本語

・【すみません】・・「人を呼び止めている」か「謝罪」なのか理解しにくい。
・【結構です】・・・「肯定」か「否定」なのか理解しにくい。
・【いって】・・・「行って」か「言って」なのか理解しにくい。
・【いいです】・・ 「承諾」か「断り」なのか理解しにくい。

日本では共通の価値観を前提として「空気を読む」「文脈を読み取る」ということが期待されることもありますが、前提を共有していない人にとっては、発言されてないことは無いことと同じという文化になります。そのため、はっきりと言わなければ、どちらの意味なのか相手には伝わりません。

何となく伝わるだろうという日本の独特なコミュニケーション方法は避けておき、外国人に対しては「はい」「いいえ」を明確に示しましょう。

擬態語・擬音語は伝わらない

外国人にとってかなり難しい日本語は擬態語、擬音語になります。

擬態語とは、物や人の状態や感情を文字で表現したものです
・クタクタ(人が疲れた様子)
・ぐずぐず(人が遅い様子)
・ジロジロ(人が見る様子)

擬音語とは物が発する音を文字で表現したものです。
・「ワンワン(犬の鳴き声)」
・「メーメー(羊の鳴き声)」
・「ドキドキ(心臓の鼓動)」

日本人にとって擬態語、擬音語は物事を表現するのが便利な言葉です。仕事をする上でも「ジロジロ見てないで、言いたいことがあるなら言ってごらん」「グズグズしてないで仕事を進めよう」などのように擬態語、擬音語を仕事でも使うかもしれません。しかし、外国人への指示に使用するのは気をつけておいた方がいいでしょう。

外国人にとって日本語の擬態語、擬音語を理解するのは難しく、子供扱いされていると不快に感じる人もいるため、言葉の意図については擬態語、擬音語を使わず正確に伝えるようにしましょう。

誤解しやすい日本語に注意

日本人によくある曖昧な表現、へりくだった言い方は誤解を与える可能性があるため注意が必要です。例えば、「まだまだ未熟です」と謙遜して言った言葉は、そのままの意味で受けとられてしまうかもしれません。

社交辞令も外国人には通用しません。社交辞令として、「困ったことがあれば、いつでも連絡してください」と外国人に言った場合、そのままの意味で受け取られ、仕事と関係ないことまで聞いてくるようになります。そのため、外国人従業員に対しては曖昧なことを言わずに、はっきりと言い切り、わかりやすい指示をするようにしましょう。

外国人従業員に成長してもらうためのマネジメントのコツ

外国人従業員のキャリアパスを作る

優秀な外国人従業員は、仕事に対する意識が高く、常に成長を望みます。今の仕事が決まったことの繰り返しになっている場合、転職を考え始める可能性があります。そのため、外国人従業員に成長してもらうための、明確なキャリアパスを作っておく必要があります。

外国人のキャリアパスについて、「1年目は仕事の流れを覚え、3年でリーダーを任せる」というような、大まかなものでは納得しません。
例えば、明確なキャリアパスを作るためには、どのような仕事をどれくらいの期間担当し、どの程度の習熟レベルに達すれば、どう昇進できるのか。具体的な数値を入れながら可能な限り今後のキャリアをイメージできるように工夫しながら作成します。

キャリアパスを会社で作るのが難しい場合は、専門家に依頼するといいでしょう。また、厚生労働省の「キャリア形成促進助成金・人材開発支援助成金」などを活用する方法もあります。

日本式の根回しの文化に注意

日本では独自の文化として、意思決定に関わる関係者全員に根回しすることもあります。このような、日本独自の根回し文化を外国人従業員に強要するのは良くないです。

例えば、ドイツなどの国では根回しの文化があまりありません。アメリカでは、意思決定者と直属の上司のみに根回しするため、日本よりも対象者を絞ります。外国人によって文化は違いますので、日本人のような根回しの文化を求めないようにしましょう。

ミスをフォローする

日本で初めて働く外国人従業員は、今までの環境や生活が変わるため大きなストレスを抱える場合があります。そのため、些細なミスから自信を無くして実力を発揮できないことも起こります。外国人を叱るときには「外国人だからミスをした」と言ったり、人格を否定するなどをしないように注意しましょう。そして、仕事のミスをフォローしていくことが大切です。

本人に考えさせる

外国人従業員に仕事の相談をされた場合、すぐにアドバイスするのではなく、まずは自分で考えさてもらうことも良い方法です。外国人従業員に対してどうすれば上手くいくと思うかを聞き、自分で考えるクセをつけることで成長を促すことができます。

外国人従業員に日報を書いてもらう

外国人従業員を成長させるために、業務日報を書いてもらう方法もあります。業務日報は仕事を可視化でき、課題のアウトプットと業務の改善につながります。業務日報を作成し、月1回は見返すことで失敗の原因と改善策がインプットされ、失敗を減らすことができます。

外国人従業員の退職を防ぐ方法

定期的な個人面談をする

外国人従業員は自分の実力を発揮できない会社に対しては見切りをつけて、すぐに転職してしまいます。
そのため、外国人従業員に対して、定期的な個人面談をすることによって、本人の要望や実力を確認し、ステップアップしてもらえるようにします。

面接では、不安に思っていることをヒアリングすることで、不安を取り除くための手助けができます。面接でのコミュニケーションを機会に外国人従業員との信頼関係も生まれます。

外国人従業員は不安や悩みがあっても答えづらかったり、正確な日本語で表現することが難しいかもしれません。そこで、事前に面接用に作成したヒアリングシートを渡しておき、記入してもらいます。そうすると、面談で話す論点が整理され、有意義な面談にすることができます。ヒアリングシートは外国人の状況に合わせて作成してみましょう。

ヒアリングシートの記入内容例
・担当する仕事の量の適切さ
・担当する仕事の難易度
・今後にやりたい仕事
・向上させたい能力・スキル
・仕事の環境・進行方向の改善点
・相談したいこと

コミュニケーションをとり人間関係を良好にする

退職の原因の一つに、人間関係があります。人間関係の悩みの多くは、コミュニケーション不足が原因です。そのため、外国人従業員に対してコミュニケーションの機会を積極的につくってあげましょう。

日本では職場の人間関係を良好にするため、飲み会をする文化があります。しかし、外国人従業員の国によっては、飲み会の文化がない場合や、好まないこともあるので注意が必要です。例えば、イスラム教の国の多くは飲酒を禁止しているため、飲み会の文化はありません。

外国人の希望に合わせた食事会、カフェ、休憩室などの場所で、コミュニケーションを取るようにすることで、人間関係を良好にしていきましょう。

外国人従業員の日本語能力を向上させる方法

日本語能力試験の資格取得を目指す

外国人従業員には、日本語能力試験受験を目指してもらう環境を整えるのも一つの手です。日本語能力試験ではN5〜N1までのレベル認定がありますが、日本で日本語を使ったビジネスをする上では、N2〜N1を取得していることが理想的になります。

敬語を覚えてもらう

外国人従業員と社内の会話の中で、基本的な敬語について覚えてもらうようにしましょう。社員同士での会話で、敬語の誤りがあった場合に、指摘することで修正していきます。外国人従業員が日本語で話すときに、常に敬語を心がけてもらうことで、敬語を社外でも間違えることなく使うことができるようになります。

電話・社外の対応をしてもらう

外国人従業員が敬語を使えるようになった後は、電話対応や社外対応をしてもらうようにしましょう。外国人従業員の電話対応では、相手が早口や訛りがあって聞き取れないこともあるため、すぐに代われるようにしてサポートします。

もし、外国人従業員の対応が難しい状況になった場合には、「私ではわかりかねますので、担当からお電話いたします」などのセリフを決めておき、すぐに交代できるようにするとよいでしょう。
交代が難しい場合には、「担当に確認して折り返しお電話いたします」と言って、相手先の会社名、名前をメモしてもらうようにします。

外国人従業員の社外対応についても、常に周囲の人がフォローしてあげられる環境にして、本人の成長につなげられるようにサポートしていきましょう。

外国人従業員であっても、初めてであれば失敗することはあります。電話や社外の対応が外国人と分かれば、相手も丁寧に対応してくれたり、大目に見てもらえることが多いです。失敗を恐れずに外国人従業員にチャレンジさせるようにしましょう。なお、失敗の責任に関しては外国人従業員に押し付けるのではなく、対応させた人や会社に責任があることを理解しておきましょう。

外国人従業員に日本式のビジネスマナーを教える

日本のビジネスマナーに関しては、外国とは違うということを意識して教えていきましょう。例えば、名刺交換について、欧米では好きなタイミングで行い、受け取った名刺はすぐにポケットにしまいます。そのため、電話、メール、会議などビジネスマナーは国や地域によってまったく違うということを意識しながら教えるのが大切です。

外国人従業員に仕事を覚えてもらうコツ

日本人従業員に比べて、外国人従業員は日本語、ビジネスマナーなど覚えることが多いです。そのため、仕事については一度に沢山を教えても混乱してしまうので、担当する仕事を限定して、一つの仕事に集中してもらうようにします。一つの仕事が身についた後に、他の仕事を覚えてもらうようにするのがいいでしょう。

外国人雇用管理アドバイザー制度を活用

厚生労働省では、外国人労働者に関して困った場合に、無料で相談できる「外国人雇用管理アドバイザー制度」があります。この制度は外国人雇用専門の認定アドバイザーが会社まで来て、さまざまな相談をしてもらえます。ハローワークから申し込みが可能ですので、外国人従業員の教育に悩んだときは活用するのも一つの方法です。

まとめ

・外国人従業員の価値観を理解する
・外国人従業員への指示を明確にする
・外国人従業員とはコミュニケーションを取り人間関係を良好にする

外国人従業員の教育方法、マネジメントの参考にしていただけましたら幸いです。

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執筆者
外国人労働者ドットコム編集部

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