会社の事業について教えてください
平井:平成19年1月に埼玉建友協同組合を設立し、平成20年5月に現在の圏友協同組合の名称に変更致しました。
事業内容は、外国人技能実習生の受け入れ、特定技能外国人の支援事業、共同購買事業等をしております。圏友協同組合は、本社が埼玉県所沢市に位置し、大阪にも営業所があります。
事務局長:平井様の経歴について教えてください
平井:前職では人材派遣会社の社員として主に日本人派遣社員の管理業務を行っておりました。派遣先の職場で技能実習生と接する機会があり、技能実習生の働く姿に感銘を受け、技能実習生のために働くことを求め、平成20年5月に圏友協同組合へ入職しました。
その後、平成23年1月に圏友協同組合の事務局長に就任しました。
事務局長:平井様の仕事内容について教えてください
平井:基本的に組合で行なっている事業全般に携わっております。例えば、技能実習制度に関しては、私が担当技能実習生を持つことはほとんどありません。しかし、担当者に寄せられた、様々な技能実習生からの相談や、組合員様からのご相談・ご意見等を共有し、担当者一人では解決できない場合には、私が担当者と一緒に技能実習生や組合員様のお話をお伺いすることもあります。
他にも、送出し国に赴いて技能実習生の面接に携わる等、仕事内容は多岐にわたります。
事務局長:平井様が現在の仕事を始めた理由について教えてください
外国人労働者のために働きたいと思い転職
平井:もともとは派遣会社で働いておりました。当時、日本人を派遣していた取引先に技能実習生がいました。私が担当している派遣労働者の方々よりも明らかに外国人技能実習生の方がよく働いていて、とても前向きに仕事に取り組んでいました。
派遣会社に勤めていた時は時給や昇給の金額交渉等もしておりましたが、私の担当した派遣労働者の方々は、働きが認められた結果として時給が上がっていくという感覚ではなく、単に私が交渉すれば時給が上がっていくという感覚であったように感じられました。交渉ばかりしているようで、仕事内容に関して悩んだ時期もありました。
そんな折に、私とは関わりのない仕事の現場で働いている技能実習生たちと話す機会がありました。色々と給料のこと等も相談されました。外国人労働者は安い賃金で働いていて、給料の交渉をするよりも、与えられた仕事に一生懸命取り組んでいました。
その姿を見て、外国人労働者の本来の能力を評価し、時給がもっと上がってもいいのではないかという思いを強く持ちました。
そして、当時勤めていた派遣会社の仕事よりも、外国人労働者に対して同じようなことができたらもっとやりがいがあるのではないかと考え、圏友協同組合に転職をして今この仕事をしています。
事務局長:平井様が仕事で良かったエピソードについて教えてください
ベトナムで赤信号を無視しない人が増えたことで社会貢献を実感
平井:技能実習生が母国に戻った後に、日本で行っていた実習と同じ仕事を選択していない事が多く、技能実習制度を通して本当に国際貢献が出来ているのか悩んでいた時期に、ベトナムへ帰国した技能実習生と現地で食事をとる機会がありました。
その際に「3年ぶりに母国に帰り、帰国前と比べて、ベトナムの変化で驚いた事は何か?」と尋ねたところ、「赤信号を無視しないバイクが増えている事に驚いている」との返答がありました。
「あなたは今でもベトナムで信号無視をしますか?」と尋ねたところ、「私は日本に3年いました。信号を無視するわけはないし、日本に行くベトナム人が増えれば、ベトナムはもっと素晴らしい国になる」と言っていたことは忘れられません。技能実習制度を通して行う技能移転ではなくても、人の意識次第ではどんなことでも国際貢献になると気づかされました。
間接的ではあるかもしれませんが、日本で私達が教えていたことや指導していたことを、母国に帰っても技能実習生たちが実行してくれていて、その結果、私達も少なからず社会貢献に携わることができているということを感じました。このような社会貢献が今後どんどん増えるように引き続き外国人技能実習生たちと向き合っていきたいと思います。
また、企業様が技能実習生を受け入れ、監理団体の監査を受けることにより、企業様が知らずに犯してしまっている労働法違反などを見つけることもあります。このように、日本に来る技能実習生達の存在が間接的に日本に対する国際貢献をしているとも感じています。
事務局長:平井様が仕事で苦労したエピソードについて教えてください
母国と日本での当たり前の感覚の違い
平井:苦労したエピソードとして、外国人技能実習生たちは私たちと当たり前の感覚が全く違いました。日本人が持っている当たり前の感覚と、技能実習生たちのもっている当たり前の感覚にはとてもギャップがあると感じています。彼らは悪気がなくても、日本ではモラルとしてしてはいけない、私たちの想像以上のことをしてしまったりするので、事前にこういう事をしてはいけないと教えきれない部分もあります。
畑の物を持って帰って警察沙汰に
平井:彼らも悪気があってしたことではないのですが、警察に捕まることもありました。例えば、寮の目の前に畑があって、収穫をしても売り物にならない野菜が端の方に寄せてあってゴミのように山積みになっています。彼らには、使わないもの、捨てるものだろうという感覚があったため、それを家に持ち帰ってきてしまいました。母国では当たり前のことで、畑の端に寄せられているゴミのようなものに関しては勝手に持ち帰っても誰にも怒られません。
そのため、野菜を持ち帰った後に通報が入って警察に捕まリ、夜中に私が警察に呼ばれて引き取りに行ったことがあります。
このような前例があることに関しては、皆さんに気をつけてと言うことができるのですが、前例のないことに対しては本当に色々な対応をしていかなくてはいけないので、そのような点で苦労をしています。
立ち入り禁止の場所に入ってしまう
平井:立ち入り禁止の場所をわかっていても入ってしまう技能実習生がいます。頭ではわかっているが、誰も見ていないから大丈夫など、全ての行動において根拠の無い「大丈夫」が多く、問題事例などを挙げて教育を行っていますが、全ての行動を把握することは不可能なため、問題が起きてから対応をするというケースが後を絶ちません。
会社の新型コロナウィルス感染症の影響(2021年4月)について教えてください
平井:日本国自体が外国から来る人材を管理している訳ですが、その中でコロナの影響で日本に入国できない外国人が沢山います。こればかりはコロナが収束しない限りはなかなか入国が難しいと思っています。
彼らが入ってこないということはつまり、私達がお手伝い出来る外国人労働者が減っているということです。ずっと入国が停められていると、経済的な面でも影響があります。
圏友協同組合では、2019年は技能実習生の入国実績が270名を超えていましたが、2020年においては50名程度しか入国がかなわず、また、入国の見通しも立たない事から内定者の辞退や企業の内定取り消しが相次ぎました。
ベトナムに至っては、ベトナム国籍の入国者の制限もしており、帰国困難者があふれる事態となっており、対応に困る事もありました。
日本に入国後は隔離期間を設けることが決められているため、入国後講習を行う際の寮が本来であれば4名1室で設定し、最大40名での研修を行えるように設けていましたが、現在は最大10名での入国となってしまい、ビザの取得者であっても入国待ちを余儀なくされる状況となっています。
会社での成功事例について教えてください
技能実習生を安価な労働力としない好待遇な企業と取引
平井:現在、技能実習制度に関する監理団体は3000程あります。昔はもっと少数でした。約10年前は、日本が不景気な頃でしたので、外国人を受け入れる企業さんのニーズは安価な労働力がほとんどでした。私達は、そのような安価な労働力のために技能実習制度に携わっているわけではありません。国際貢献や、技能実習生達に色々なことを教えてあげたいと言っている企業様だけを取引先としてきました。
その結果、圏友協同組合を通して入国した技能実習生たちに、周りの技能実習生の置かれている環境より、自分たちは良い環境にいるという意識を持ってもらうことができ、企業様の生産性の向上につながったと感じています。景気が上がるにつれて、技能実習生に対するニーズも安価な労働力としてではなくなっていきましたが、当初に圏友協同組合が行っていた取り組みが基となり、現在でも技能実習生および実習実施者との信頼関係が築けていると感じています。
会社での失敗事例について教えてください
同企業内で実習生同士の昇給額に差をつけた
平井:組合員の皆様に対して、よく働いた人に対しては給料を高くしてほしいというお話をしています。給料が高ければ技能実習生のモチベーションも上がり、その結果として生産性が上がったならば、ベースアップをするといった点に力を入れてご相談していました。
例えば、技能実習生で同じ会社に入る人が2人いたとすれば、そこに賃金格差として、この人の方がよく頑張っているから時給は50円上げましょう。でもこの人は彼ほどじゃないから20円にしましょうと社内で格差を付けたこともありました。
それは評価されていないわけではないのですけれども、給料の低い人の方が評価されてないと勘違いしてしまいました。このような点は賃金格差をつけたことに関して上手くいかなかったと思っています。
会社のアピールポイントについて教えてください
技能実習生の名前を覚えてコミュニケーション
平井:圏友協同組合には現在、23名の事務局職員が在籍しております。この23名が技能実習生たちのことを好きで、お手伝いしたいという思いで職務に励んでいるので、技能実習生たちとのコミュニケーションは上手くいっていると感じています。
工夫していることに関しましては、名前も分からない相手とコミュニケーションがとれるわけがありませんので、技能実習生たちに私たちのことを知ってもらうためにも、技能実習生たちの名前を職員が覚えるようにしています。圏友協同組合を通じて入国した技能実習生が、大体800名程、現在日本で生活しています。全員の名前は覚えられないかもしれませんが、〇〇会社の△△さんで、□□の感じの人と言ったら誰でも分かるような組織環境を作っています。
組合内での入国後講習を実施
平井:入国後講習という、日本に来てから1ヵ月間は集合研修をしなきゃいけない期間があります。この講習期間は外部に委託することなく、事務所があるビルの3階のスペースを講習場所にしています。日本語を教えるのが一番大事かもしれませんが、それ以上に技能実習生とコミュニケーションをとることをとても大切にしております。一同が顔を合わせて短い1ヵ月間の期間でできる限りのコミュニケーションを取って、技能実習生個々のパーソナリティーを把握するように努めています。
ベトナム人通訳者に相談できる
平井:圏友協同組合はベトナムの技能実習生が大多数です。技能実習生に相談されてこその私たちの仕事だと思っていますので、技能実習生に相談されやすい環境としてベトナム人の通訳を8名採用しています。
そして、それぞれの通訳の出身地(北部、中部、南部出身等)、性別、年齢はバラバラになるようにしています。ベトナムという同じ国が出身であっても、地方出身の人が自分とは違う地方出身の人をあまり好まない等のケースもあります。技能実習生一人一人が自分に合う通訳を、相談先を選べるように環境を整えています。
介護事業の教育を強化
平井:介護技能実習事業に関しては埼玉県介護福祉会の会長である町田氏に特別顧問として携わって頂いており、介護事業で必要となる知識を事務局職員及び技能実習生にご指導頂いております。
送り出し機関を選定
平井:技能実習制度では監理団体、送り出し機関がとても重要な役割となっていますが、受け入れ企業が単独で送り出し機関を選定することはとても難しいため、送り出し機関の選定では、数多くの送り出し機関を視察の上、1ヵ国2社以上を選定し、受入れ企業様が送り出し機関を選べるように努めています。
会社の将来のビジョンについて教えてください
外国人労働者の全国組織を目指す
平井:今は設立16年で小さい組織から徐々に大きくなっています。それに伴い活動範囲を広げていきたいと考えています。
在職23名の事務局職員が外国人労働者を支援する仕事にやりがいを感じながら働くことが出来ているので、まずは職員の活躍の場や可能性を広げ、より多くの外国人労働者を支援できるように組織を拡充していく事を目指しています。
組合員に迷惑をかけないペースで活動範囲を広げ、将来的には全国での活動を行えるようにします。
帰国後のアフターフォローを行える組織作りを目標に
平井:全国で活動ができるようなってきた後には、外国人労働者が母国に帰った時にそれで終了ではなくて、また繋がれるような環境を整えていきたいと思っています。つまり、組合員のもとで育った外国人労働者が母国で活躍を出来きるような支援事業案を作り、外国人労働者と組合員が関係を持ち続けられるような支援事業を構築するという目標を設定しています。
例えば、現在は入国から帰国後のアフターフォローができるような形で、送り出し機関などの相手国の機関と協定を結んで、色々と協力して活動しています。そういった送り出し機関というのも自分達の組織として作っていきたいと思っています。
まとめ
監理団体「圏友協同組合」の事務局長の平井 勝行様は、外国人労働者に対して真摯に対応されており優良な組合だとインタビューを通して感じました。
これから外国人労働者の雇用について検討されている場合は、「圏友協同組合」に相談してみましょう。