特定技能制度

人手不足に苦しんでいる宿泊業に外国人労働者を雇うことがスムーズにできるようになったのをご存じでしょうか?特定技能が制定されたことで宿泊業がどう変化していくのかを解説していきます。

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はじめに

宿泊業界に特定技能という制度が導入されましたが、これにより、宿泊業界ではどのようなメリットがあり、活用することができるのでしょうか。
この記事では、宿泊業界の現状から外国人を雇用するメリットやデメリットを解説していきます。

宿泊業界の現状

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観光業界のにぎわいとともに、利用客が増えているのが宿泊業界です。
日本観光のために来日し、宿泊施設を利用する外国人旅行客は珍しくありませんが、弊害もあります。 ここでは、各種弊害がもたらす、宿泊業界の現状を紹介していきます。

年々増加する訪日観光客

2003年には521万人程度だった訪日観光客は、2018年には3,000万人を突破しており、勢いいづいています。2013年にはじめて1,000万人を突破してから、わずか5年のことです。近年は特に、観光客が右肩上がりに増加し続けています。

日本政府は訪日観光客数の目標を、東京オリンピック開催の2020年には4,000万人、それから10年後の2030年には6,000万人に設定しており、民泊というキーワードが出てくるほど、宿泊施設の稼働率が高くなっている状態です。

一見すると観光客の増加は宿泊業界にとっても好材料に思えるでしょうが、実はメリットのみならず、デメリットも引き寄せてくるのです。

深刻な人手不足

慢性的に高い水準で宿泊施設が稼働すると、問題となるのが人手不足です。
高級ホテルはもちろん、リーズナブルなビジネスホテルであろうと、人手が足りていないというのが宿泊業界の現状なのです。

例えば、ビジネスホテルであっても、フロントには絶えず最低1名は、宿泊客のニーズに応えるために従業員を置かねばなりません。そしてチェックアウトの時間が過ぎれば、チェックインの時間になるまでに掃除を行い次の宿泊客に備える清掃員も必要です。連泊客がいれば、24時間営業しているといっても過言ではないでしょう。

しかし、2017年度の宿泊業界の有効求人倍率は6.15倍と高い水準になっており、今後もさらに深刻な人手不足に陥ると予測されている状態です。このままでは、観光客が増加しても日本の宿泊サービスは正常に稼働しなくなってしまう可能性があります。

労働環境が過酷

宿泊業界が人手不足に陥る原因のひとつが、労働環境が過酷であることにも理由があります。宿泊業界には、宿泊サービス維持のために基本的に休日がなく、ほとんど客が来ない深夜や日中にも対応が必要不可欠です。

ほかにも、トラブルによりクレームへ発展するケースも珍しくありません。クレームが一つ発生すれば従業員はクレーム対応にあたることになり、ギリギリの人数で宿泊施設を運営させていると、さらなるクレームを生みかねないのです。

おのずと長時間立ちっぱなし、リミットが迫る清掃、そして求められるサービスレベル。これらが積み重なり、宿泊業界の労働環境は過酷と言われるのです。

入管法改正で宿泊産業に特定技能導入!

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出入国管理及び難民認定法(入管法)改正により、明るいニュースも出てきました。それは、宿泊業界に特定技能を持った外国人を雇用できるというものです。
特定技能を持った外国人を雇用することで何ができるのか、解説していきます。

多国籍からの受入れ

まず特筆すべきは、多国籍から受け入れが始まることです。以前は、単純労働分野向けに日系ブラジル人を受け入れることもありましたが、ほかの国からの受け入れも開始されました。これにより、人材確保が容易になるということですが、特定技能の制度では制約もあるため、ほかの項目も参照していく必要があります。

即戦力となる技能

特定技能の在留資格を持った外国人は、即戦力としても使える技能を持っている可能性が高いです。

特定技能は、一定の技能、また日本語能力を求められるため、宿泊業界で必要となる必要最低限のルールを身につけている証明になります。

しかし、必ずしも即戦力になるとは限らず、宿泊業界でも企業によって作法や細かなルールが異なるため、日本人の労働者同様に、自社の宿泊施設のルールを教える必要が生じてしまうのです。

特定技能はあくまでも、特定業界における一定の就業スキルを満たしている証明にすぎないため、すぐに高レベルな接客まで求めるのはナンセンスといえるでしょう。

技能実習からの移行が可能

特定技能のビザは、技能実習からも移行が可能になっているものです。技能実習とは、国際貢献の一環として他国から実習生を招き、技術を発展途上の母国に持ち帰ってもらうことが主となっています。そのため、もともと技術もなければ日本語能力もない、完全に一からのスタートとなる可能性が高いです。

しかし、在留期間中に技能実習を受けたものがビザを特定技能に変更することで、技能実習の最長5年と特定技能1号の通算5年合わせて最長10年間、宿泊業界で働いてもらうことも可能です。また、特定技能2号ビザに切り替えることができれば、特定技能1号ビザにあった通算5年の制約がなくなるため、より長期間の労働が見込める内容になっているのです。

技能実習を受けたものが特定技能1号へビザを変更するには、テストによっても行えますが、通算3年の実習経験があり技能実習2号を取得していれば、テストを受けずに特定技能1号ビザに書き換えが可能です。

「永住者」の資格も取れる

在留期間中に技能実習を受けたものが特定技能へのビザ変更は、永住者の資格も取れる可能性のある行為です。その理由として、最低条件の一つに在留期間が存在します。在留期間は「引き続き10年以上の在留かつ、うち5年間は就労資格や居住権を持って生活する」という制約があるからです。

ただし、気をつけねばならないこともあります。在留期間を満たしても、技能実習や特定技能1号ビザでは“就労機関に換算されない”のです。しかし、在留期間に特定技能2号に変更できれば話は別です。在留期間の拘束がなくなる制度であるため、実質的に永住者の資格を取ったも同然なのです。

当然、永住者の資格を満たせば、特定技能2号ビザから永住者の資格にへんこうが可能となるため、双方にメリットがあるものです。ポイントは、“特定技能1号ビザでは永住者資格が取れない”という点でしょう。

外国人雇用によるメリット

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外国人労働者を雇用することで、日本人の労働者を雇用するばかりでないメリットはあるのでしょうか。宿泊業は、大きく分ければ接客業です。メリットがないならば、特定技能の制度が始まっていても、外国人労働者の雇用はなるべく避けたいところですよね。ここでは、外国人労働者を雇用するメリットを解説していきます。

多言語対応が可能

外国人労働者は、特定技能1号ビザを持っていれば、最低限度日本語の能力だけでなく、母国語の対応も可能となります。
例えば、韓国から労働者を確保すれば韓国語、中国から労働者を確保すれば中国語に対応可能といった具合です。
つまり、バイリンガルやマルチリンガルといった多言語対応が可能な労働者を、自然と確保しやすくなるということです。
特に昨今では、中国や韓国からの訪日観光客も多く、中国や韓国から労働者を確保していれば、日本語しか話せない日本人労働者が多言語を一から学ぶ必要がなくなります。

サービスの向上

特定技能の制度が導入されたことにより、確実に外国人労働者の確保は広まりつつあります。人手不足の宿泊業界にとって、労働者の増加は喜ばしいことです。
なぜならば、人手不足により低下してしまったサービスも、人手不足が解消されれば同時に解消され、サービス向上につながるからです。

また、過酷な労働環境も人手が行き渡ることにより解消され、日本人の宿泊業離れが低下することも考えられます。

ハングリー精神が広がる

日本に労働者としてやってくる外国人の中には日本が好きでやってくる外国人もいるはずですが、多くが貧困層といっても過言ではありません。自国内で十分な稼ぎがあるのに、それを捨てて日本にやってくるでしょうか。

出稼ぎ目的で日本にやってきた特定技能を持つ外国人はがむしゃらに働くことでしょう。そのため、特定技能1号ビザだけで通算5年を過ごしただけでも、自国に貯金を持ち帰れば、貧困生活を脱するきっかけとなる可能性もあります。

このようなハングリー精神が外国人労働者の中だけでなく、同僚となる日本人労働者にも伝わり、安易な離職による人手不足が改善されるはずです。

外国人雇用によるデメリット

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外国人を雇用することによってメリットもありますが、一方でデメリットも存在します。
正しく理解していないと、雇用後に外国人労働者を邪魔者扱いするケースも出てくるのです。ここでは、外国人労働者を雇用するデメリットを解説していきます。

言語による壁

出身国によって母国語が異なり、バイリンガルやマルチリンガルの従業員にできるメリットがあった外国人労働者ですが、特定技能1号ビザを取得できても、肝心の日本語が流ちょうだとは限りません。

必要最低限の業務や日常生活に支障がなければ良いため、難しい単語を並べられると、理解が追いつかないケースもあります。例えば日本人労働者に「それ取って」と言って伝わっても、外国人労働者には「それ」が何を示すのか、理解できないこともあるでしょう。

一番問題となるのは、宿泊業として接客をしている場合です。初めて施設を利用する宿泊客は、そこで働く外国人労働者が日本語能力にたけているのか、判断して宿を取るすべがありません。そもそも、宿泊業界に従事しているのだから、相応のサービスが受けられて当然と思う宿泊客もいます。中には話の途中で日本語能力に乏しいことに気づき、気を遣ってくれる宿泊客もいるでしょうが、クレーム対応にあたることになってしまったら言語による壁は厚いと言えるでしょう。

仮にどなり散らすようなクレーム客だと、早口で日本語をしゃべられ、何を言われているのか理解できず、表情や身振り手振りによってただ怒りをぶつけられていることのみしか理解できないという場合もあるでしょう。迅速に応対を代わる、外国人労働者の母国語と同じ言語で通訳できる日本人労働者を従事させることにより問題は解決できますが、人手不足の場合は難しい問題なのです。

文化の違い

日本と外国とでは文化が違います。当たり前のことですが、文化の違いでトラブルになってしまうケースもあるのです。
例えば、外国人労働者がイスラム教徒のケースならば、豚肉やアルコールの飲食が宗教上の理由からできません。黙って食べさせたということでSNSが炎上したケースもあるほどです。またアルコールは、ビールや日本酒などアルコール飲料のみならず、料理酒や調味料に含まれるアルコールも摂取が禁じられています。

このような文化の違いを知らずに、まかないを作って食べさせていると、発覚した際には大問題になってしまうのです。

宿泊業界で特定技能を活用するポイント

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海外から宿泊業従事者を招へいする

海外から宿泊業の従事者を招へいすれば、特定技能1号の在留資格がよりスムーズに取得できるだけでなく、実践にもより早く溶け込むことができます。
これは、日本人労働者と同じ考え方ですが、同業他社からの転職と異業種からの転職で、宿泊業にすぐなじめるのはどちらかというのと同じ。
もともと母国で宿泊業に携わっていたのであれば、一連の流れは想像がつくでしょう。
企業によって細かなルールは異なりますが、基本的にはすぐになじめたほうが良いはずです。

まとめ

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宿泊業界は観光業界のにぎわいに合わせて、上り調子にあります。
しかし、人手はどんどん足りなくなり、サービスの向上をするためにも、外国人労働者を雇わなければならないのは明白です。
特定技能1号在留資格では通算5年ですが、特定技能2号在留資格ならば、永住権も視野に入れつつさらに長期間働いてもらうことも可能。
特定技能の制度を活用することがこれからの日本の宿泊業を支える上で重要なのです。

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