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特定技能制度

日本社会における労働力不足を補うため、外国人労働者の受入れが課題となっていました。しかし、今までの入管法の仕組みでは、専門的・技術的な職種に就く場合にのみ就労でき、就労を目的とする在留資格で単純労働を可能にする資格はありません。このような状況を打開するため、入管法が昨年2018年12月に改正され、2019年4月1日から施行されています。改正入管法では、新たな在留資格「特定技能」を創設し、一定の技能を有する外国人労働者が、専門的・技術的分野以外のいわゆる単純労働分野に就労することを可能にしています。従来、日本は、専門性を有する外国人材に限り、就労目的で在留することを認めてきており、今回の改正はとても大きな転換といえます。

特定技能制度創設と入管法改正の背景

外国人労働力のニーズ拡大

特定技能制度が導入された背景として、まず、中・小規模事業者をはじめとした労働力不足が挙げられます。有効求人倍率は、1970年代以来44年ぶりの高さとなり、全都道府県で1を超える状態が続くとともに、失業率は25年ぶりの水準まで低下しています。その一方で、企業の人手不足感は、バブル期以来の水準にまで強まっています。また、外国人労働者が年々増加している点も背景として挙げられます。厚生労働省が発表した最新の「外国人雇用状況」によると、平成30年10月現在、外国人労働者数は1,460,463人で、前年同期比181,793人、14.2%増加しており、平成19年に届出が義務化されて以降、過去最高を更新してます※1

外国人労働者が単純労働を行う仕組みの不在

このように人材の需要と外国人労働力の増加が指摘される一方で、今までの出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」といいます。)をはじめとする制度では、外国人労働者が、専門的・技術的分野以外のいわゆる単純労働分野に就労することができません。
専門的・技術的分野についてのみ在留資格が認められる中、非専門的・非技術的分野な業務は、「留学」や「家族滞在」「日本人の配偶者等」などの、就労を目的としないものの就労が可能な在留資格を持つ外国人が「資格外就労許可」を得て行っている場合が少なくありません。しかし、これらの外国人が「資格外就労許可」を得て業務を行う場合には、週28時間以内の労働しかできず、増えていく労働力ニーズに対応することができなくなっていきました。
「技能実習」についても、実質的には、技能実習の在留資格を持つ外国人の多くが非専門的・非技術的分野の業務に就いているというのが実態です。先に紹介した約1,460,463人の外国人労働者のうち、「日本人の配偶者等」を含む在留資格の外国人は全体の33.9%であり、また、「留学」の「資格外活動許可」と「技能実習」が占める割合は合わせて44.6%、65万人に上っています。しかし、「技能実習」の制度は、建前は日本で「実習」をして本国に技術移転をするもので、制度趣旨と実態にねじれが生じ、社会問題化しています。(なお、技能実習制度については、別の記事にて詳しい説明します。)

特定技能制度の創設

このように、中小・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応する一方で、今までの入管法の枠組みでは対応が困難なため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築する必要がありました。そのため、入管法を改正し、新たに2種類の「特定技能」の在留資格が創設されました。
なお、国会に提出された入管法改正の理由※2においても、「人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野に属する技能を有する外国人の受入れを図るため、当該技能を有する外国人に係る新たな在留資格に係る制度を設け、その運用に関する基本方針及び分野別運用方針の策定、当該外国人が本邦の公私の機関と締結する雇用に関する契約並びに当該機関が当該外国人に対して行う支援等に関する規定を整備するほか、外国人の出入国及び在留の公正な管理に関する施策を総合的に推進するため、法務省の外局として出入国在留管理庁を新設する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」と説明されています。

※1) 厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (平成30年10月末現在) https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000472892.pdf

※2) http://www.moj.go.jp/content/001273527.pdf

特定技能制度と入管法改正

人材を確保することが困難な状況にあるため、外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野について、相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格「特定技能1号」と、同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格「特定技能2号」が新設されました。

特定産業分野

特定技能の外国人を雇用できる分野を「特定産業分野」といい、2019年2月現在、以下の14分野となります。

介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

このうち、建設、造船・舶用工業の2分野でのみ特定技能2号での受入れが可能です。

【図表:特定産業分野の従事業務】

※表は横スクロールできます

介護 ・身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助 等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練 の補助等)
(注)訪問系サービスは対象外
ビルクリーニング ・建築物内部の清掃
素形材産業 ・鋳造 ・鍛造 ・ダイカスト ・機械加工 ・金属プレス加工 ・工場板金 ・めっき ・アルミニウム陽極酸化処 ・仕上げ ・機械検査 ・機械保全・塗装・溶接
産業機械製造業 ・鋳造 ・鍛造 ・ダイカスト ・機械加工 ・仕上げ ・機械検査 ・機械保全 ・電子機器組立て ・塗装 ・鉄工 ・工場板金 ・めっき ・溶接 ・工業包装 ・電気機器組立て ・プリント配線板製造 ・プラスチック成形 ・金属プレス加工
電気・電子情報関連産業 ・機械加工 ・金属プレス加工 ・工場板金 ・めっき ・仕上げ ・機械保全 ・電子機器組立て ・電気機器組立て ・プリント配線板製造 ・プラスチック成形 ・塗装 ・溶接 ・溶接 ・工業包装
建設 ・型枠施工 ・左官 ・コンクリート圧送 ・トンネル推進工 ・土工 ・屋根ふき ・電気通信 ・鉄筋施工 ・鉄筋継手 ・内装仕上げ/表装
造船・舶用工業 ・溶接 ・塗装 ・仕上げ ・機械加工 ・電気機器組立て
自動車整備 ・自動車の日常点検整備、定期点検整備、分解整備
航空 ・空港グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務 等)
・航空機整備(機体、装備品等の整備業務等)
宿泊 ・フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供
農業 ・耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)
・畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)
漁業 ・漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、 水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等)
・養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理・収獲(穫)・処理、安全衛生の確保等)
飲食料品製造業 ・飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生)
外食業 ・外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)

分野別運用方針について(14分野)を元に作成

特定技能1号

特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

特定技能2号

特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
特定技能1号、2号のポイントは以下のとおりとなります※3

【図表:特定技能1、2号のポイント】

※表は横スクロールできます

特定技能1号 特定技能2号
在留期間 1年、6か月又は4か月ごとの更新、通算で上限5年まで 3年、1年又は6か月ごとの更新
技能水準 試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除) 試験等で確認
日本語能力水準 生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除) 試験等での確認は不要
家族の帯同 基本的に認めない 要件を満たせば可能(配偶者、子)
受入れ機関又は登録支援機関による支援 対象 対象外

※3) 法務省 「制度概要 ①在留資格について」を元に作成 http://www.soumu.go.jp/main_content/000601099.pdf

特定技能取得の条件

特定技能の在留資格を取得するためには、特定技能の在留資格を付与ため必要とされる技能を図る試験に合格するか、又は、技能実習2号を修了することが必要です。
2019年4月には、宿泊業、介護業、外食業について技能試験が国内数箇所において行われました。各業種ごとの技能試験は、2019年度内に国内だけでなく、国外でも実施される予定です。詳細については、法務省の公表する「『特定技能』において新設する試験について」をご参照ください。

技能実習との違い

【図表:特定技能と技能実習との比較※4

※表は横スクロールできます

技能実習(団体監理型) 特定技能(1号)
関係法令 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律/出入国管理及び難民認定法 出入国管理及び難民認定法
在留資格 在留資格「技能実習」 在留資格「特定技能」
在留期間 技能実習1号:1年以内、技能実習2号:2年以内、技能実習3号:2年以内(合計で最長5年) 通算5年
外国人の技能水準 なし 相当程度の知識又は経験が必要
入国時の試験 なし (介護職種のみ入国時N4レベルの日本語能力要件あり) 技能水準、日本語能力水準を試験等で確認 (技能実習2号を良好に修了した者は試験等免除)
送出機関 外国政府の推薦又は認定を受けた機関 なし
監理団体 あり (非営利の事業協同組合等が実習実施者への監査その他の監理事業を行う。主務大臣による許可制) なし
支援機関 なし あり (個人又は団体が受入れ機関からの委託を受けて特定技能外国人に住居の確保その他の支援を行う。出入国在留管理庁による登録制)
外国人と受入れ機関のマッチング 通常監理団体と送出機関を通して行われる 受入れ機関が直接海外で採用活動を行い又は国内外のあっせん機関等を 通じて採用することが可能
受入れ機関の人数枠 常勤職員の総数に応じた人数枠あり 人数枠なし(介護分野、建設分野を除く)
活動内容 技能実習計画に基づいて、講習を受け、及び技能等に係る業務に従事する活動(1号) 技能実習計画に基づいて技能等を要する業務に従事する活動(2号、 3号) (非専門的・技術的分野) 相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動 (専門的・技術的分野)
転籍・転職 原則不可。ただし、実習実施者の倒産等やむを得ない場合や、2号から3号への移行時は転籍可能 同一の業務区分内又は試験によりその技能水準の共通性が確認されてい る業務区分間において転職可能

※4) 法務省 技能実習と特定技能の制度比較(概要)より引用  http://www.moj.go.jp/content/001293198.pdf

企業が外国人労働者を特定技能の在留資格で雇用する際の注意点

受入れ機関としての基準及び義務

特定技能で外国人労働者を雇用するには、受入れ機関としての基準を満たす必要があります。
まず、①外国人と結ぶ雇用契約が適切でなければなりません。例えば、報酬額が日本人と同等以上である必要があります。また、②受入れ機関自体が適切でなければならず、5年以内に出入国・労働法令違反がないことが必要です。さらに、③外国人を支援する体制が整っている必要があり、外国人が理解できる言語で支援できる必要があります。ただし、特定技能の支援には専門的な内容も含まれうるため、受入れ機関である企業自身で支援を行うことが難しい場合もあります。そこで、後述の登録支援機関に支援を委託することで、③の義務を果たすことができます。最後に、外国人を支援する計画が適切でなければなりません。具体的には、生活オリエンテーション等を行い、外国人が労働しやすい環境を整える必要があります。
外国人労働者を雇用し受入れ機関となった企業は、一定の義務を満たさなければならない。すなわち、①外国人と結んだ雇用契約を確実に履行しなければならず、報酬を適切に支払う必要があります。また、②外国人への支援を適切に実施 する必要があります。ただし、 支援については、登録支援機関に委託も可。全部委託すれば1③も満たします。最後に、③出入国在留管理庁への各種届出が必要です。これら①~③の義務を怠ると外国人を受け入れられなくなるほか、出入国在留管理庁から指導、改善命令等を受けることがあるので、注意が必要です。

登録支援機関

受入れ機関の委託を受けて外国人の支援を行う機関として登録支援機関の制度が設けられました。機関自体が適切で、外国人を支援する体制があることが登録支援機関となるための条件です。
また、登録支援機関となった機関は、外国人への支援を適切に実施し、出入国在留管理庁への各種届出をすることが義務となっています。登録支援機関がこれらの義務を怠ると登録を取り消されることがあります。

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執筆者
外国人労働者ドットコム編集部

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