技能実習制度

この記事では、外国人技能実習制度の「強化プラスチック成形(手積み積層成形作業)」について解説しています。

この記事を読むことで、
強化プラスチックの業界、将来性、特徴、技能実習の際の業務内容について知ることができます。

強化プラスチックの業界の動向を知りたい方、外国人技能実習制度の運用を考えている方は
ぜひお読みください。

「強化プラスチック成形」の現状

強化プラスチックとは

強化プラスチックとは、
ガラス繊維などの強化繊維との組み合わせにより強度を高めたプラスチック製品です。
この強度の高い強化プラスチックは、
自動車や航空機、ボートやヨット、ユニットバスなど、幅広く利用されています。

このように強化プラスチックは、現在さまざまな製品で使われています
なので、メーカーの工場の製造現場においてプラスチック成形の作業工程で活躍できます。

強化プラスチック成形の仕事では、形を作る工程で成形機などの機械が導入されている場合、
成形工が手で作業することはなくなります。
ですが、成形機の管理や補助的な作業が必要です。
そのため、成形機に材料を入れる作業や完成した製品の検査や梱包なども仕事の一部です。
現状、成形作業はほとんどオートメーション化されており、機械の管理や補助の作業となります。

強化プラスチックの特徴

繊維強化プラスチック(FRP)の特徴を5点紹介します。

1.鉄・チタンより強い

繊維強化プラスチックは、
鉄、また鉄以上に優れた比強度を持つ難削材として知られるチタン以上の強度を持っています。

2. アルミより軽い

軽金属の代表的存在であるアルミニウムより軽いです。
アルミニウムの密度2.7g/㎤に対して、繊維強化プラスチックの密度は1.5〜1.7g/㎤です。

鉄・チタン以上の強度を持ちながらも、アルミニウム以上の軽さを持っているのが繊維強化プラスチックの特徴です。

3. 加工・成形エネルギーが少ない

密度が大きい、また融点が高い金属材料に比べると、繊維強化プラスチックを加工・変形させるためのエネルギーは相対的に少ないのが特徴のひとつです。

4. 腐食しにくい

金属とは違い、繊維とプラスチックの複合材料であるため、腐食に強い特徴を持っています。
ですが、プラスチック特有の紫外線による光劣化の影響を受けるため、屋外使用する場合は
コーティング・塗装などで対策をする必要があります。

5. 電気絶縁性

繊維とプラスチックの複合材料であるため、基本的に電気絶縁性があります。
ですが、繊維の配向方向に沿った方向と、それに直角な方向で導電率が大きく異なる性質があるため、異方性に起因する局所的なCFRP表面の帯電集中を防ぐ必要があります。

日本では国家資格が必要

日本国内で強化プラスチック成形の作業にあたるには、
強化プラスチックの成形に必要な技術と知識があることを証明する「強化プラスチック成形技能士」
の国家資格が必要です。

資格がない者が強化プラスチック成形技能士を称することは禁止されています。

強化プラスチック成形の作業は
「手積み積層成形作業」、「吹付け積層成形作業」、「積層防食作業」の
3種類があります。

外国人技能実習制度では、「手積み積層成形作業」のみ行います。

強化プラスチック成形技能士の作業内容

国家試験の実技試験内容をもとに、仕事の内容を見ていきましょう。
強化プラスチック成形技能士の国家資格は1級、2級に分かれており、
実技試験内容がそれぞれ異なります。

「手積み積層成形作業」の実技試験内容は以下の通りです。

【1級】
成形型は円筒部分をセットし、フランジ部分は分離した状態で支給されます。

まず成形型に離型処理をしてからゲルコート用樹脂を塗布します。
実技試験問題の仕様、製品図に基づいてガラスマットおよびロービングクロスを裁断し、
これを積層用の不飽和ポリエステル樹脂による手積み積層成形を行います。

積層品が硬化したら脱型し、正寸トリム、穴あけ加工を行い、仕上がった製品を作業記録票とともに提出させて実技試験完了です。

【2級】
支給された成形型に離型処理を施してから、ゲルコート用樹脂を塗布します。

実技試験問題の「ガラス繊維裁断寸法図」に従ってガラスマットおよびロービングクロスを裁断し、
これを仕様および製品図に基づいて、積層用の不飽和ポリエステル樹脂による手積み積層成形を行います。

積層品が硬化したら脱型し、
正寸トリム、仕上がり製品を作業記録票とともに提出して実技試験完了です。

仕事の将来性

プラスチック成形業の収入は、他の仕事の平均収入と比べて低い傾向にあります。
全体の収入額の幅が比較的大きいので、勤務先や経験、スキルによって差があります。
他の仕事よりも高い収入を得られる場合もあります。
ですが、需要のある業界なので、安定して仕事があるといわれています。

強化プラスチック成形は比較的新しい技術です。
今後も需要が見込めるため、国家資格を持っていることで、収入面で有利になるでしょう。
プラスチック製品の利用範囲は拡大しており、日用品から医療分野までさまざまな場面で使用されています。
多岐にわたる業界で製品を製造する工程に関わる仕事なので、今後もニーズはあるといわれています。

プラスチック製品成形の仕事は、未経験からでも始められ、中途採用も多く見られます。
製品の成形不良が起きないように製造工程は自動化されているため、機械操作が主な業務です。
つまり力仕事は比較的少ないので、女性も就きやすい仕事といえます。

技能実習制度とは

「技能実習制度」とは、
開発途上国などの外国人が来日し、日本で修得した技能・知識を開発途上国へ移転する制度です。

実際は、日本の人材不足の補填となっているように見られる場面があり、問題視されている実態があります。ですが、本来の目的は「日本から開発途上国への国際貢献」です。

技術移転の流れは、まず開発途上国の若者が「技能実習生」となり、日本の企業で就労します(この企業を「受け入れ企業(または機関)」と言います)。この就労を通して日本の技術・知識を修得し、その技術を母国へ持ち帰り、母国での技術発展に役立てます。
以上のような流れで開発途上国の発展を助け、国際貢献を目指します。
強化プラスチック成形職種であれば、
手積み積層成形作業、作業記録の作成作業
などの技術・知識を母国に持ち帰ることになります。

この技能実習制度は2010年まで、「外国人研修制度」という名前で運用されてきました。
しかし、目的外の労働の強要・賃金の未払いなど、さまざまな問題が見られ、本来の趣旨である「国際貢献」に反する運用の実態が問題視されていました。

これらの実態をなくすべく制度の再検討を行い、制度の改正を行いました。
この際に、制度の名称が「外国人技能実習制度」となりました。

技能実習生受け入れの流れ

ここでは、技能実習生受け入れの大まかな流れを紹介します。
まず、技能実習生を受け入れてから、事前に作成し監督省庁に提出した実習計画に沿って実習を行います。
強化プラスチック成形職種の場合、実習期間は最大で5年間です。
技能実習1号、2号、3号へそれぞれの基準を満たすことで移行することができます。

受け入れを行う際の準備はたくさんあります。希望する人材の選定や必要な書類の作成・提出、法令によって定められている講習の実施などがあります。

従業員が少ない企業では、全ての手続きを自社で行うのが難しい場合がありますが、安心してください。
実際、全ての手続きを受入れ機関(企業)が行っているケースはあまり見られません。
「監理団体」と呼ばれる外部の専門機関へ委託することが可能で、中小企業など多くの企業が監理団体に委託して運用しています。
監理団体に委託する場合は、以下の流れで技能実習生を受け入れることになります。

◯ 監理団体に加入
◯ 現地(外国)で面談
◯ 現地で教育(講習など)
◯ 日本へ入国
◯ 監理団体での講習
◯ 受け入れ

技能実習「強化プラスチック成形(手積み積層成形作業)」の業務内容

厚生労働省が公開している技能実習計画の審査基準をもとに、
強化プラスチック成形職種「手積み積層成形作業」の業務内容を細かく見ていきましょう。

手積み積層成形作業とは、
「手作業(接触圧)により型(雄型または雌型を使用)内で、
強化材(布やグラスファイバ等の繊維マット)に液体状の樹脂などを刷毛(はけ)やローラで含浸させ、脱泡しながら所定の厚さまで積層成形し、常温の大気圧中で放置して硬化させる作業」
をいいます。

樹脂は主に常温効果樹脂を使用します。

必須業務

必須業務とは、技能等を修得等するために必ず行われなければならない業務のことです。技能実習生が修得等をしようとする技能等に係る技能検定、またはこれに相当する技能実習評価試験の試験範囲に基づいた内容となっています。

第1号技能実習

(1) 手積み積層成形作業
①手積み積層成形作業
1. 樹脂と繊維強化材を使用した簡単な手積み積層成形作業
2. 簡単な仕上げ加工作業

第2号技能実習

(1)手積み積層成形作業
①手積み積層成形作業
1. 成形品の仕様に適した繊維強化材の裁断作業
2. 成形品の仕様に適した樹脂の調合作業
3. 型の整備作業
4. 通常の形状のゲルコート作業
5. 樹脂と繊維強化材を使用した通常の形状の手積み積層成形作業
6. 型及び成形品に損傷を与えない脱型作業
7. 通常の仕上げ加工作業

②作業記録の作成作業

第3号技能実習

(1)手積み積層成形作業
①手積み積層成形作業
1. 成形品の仕様に適した繊維強化材の裁断作業
2. 成形品の仕様に適した樹脂の調合作業
3. 型の整備作業
4. 通常の形状のゲルコート作業
5. 樹脂と繊維強化材を使用した通常の形状の手積み積層成形作業
6. 型及び成形品に損傷を与えない脱型作業
7. 通常の仕上げ加工作業
8. 通常の精度の二次加工作業

②作業記録の作成作業

安全衛生業務

安全衛生業務の内容は、1,2,3号全て共通しています。

①雇入れ時等の安全衛生教育
②作業開始前の安全装置等の点検作業
③強化プラスチック成形職種に必要な整理整頓作業
④強化プラスチック成形職種の作業用機械及び周囲の安全確認作業
⑤保護具の着用と服装の安全点検作業
⑥安全装置の使用等による安全作業
⑦労働衛生上の有害性を防止するための作業
⑧異常時の応急措置を修得するための作業

関連業務, 周辺業務

関連業務とは、必須業務に従事する者が当該必須業務に関連して行う場合のある業務のことです。修得予定の技能等の向上に寄与する内容とされています。
また周辺業務とは、必須業務に従事する者が当該必須業務に関連して通常携わる業務のことです。

(1)関連業務

①ビニルエステル樹脂積層防食作業
②スプレーアップ成形作業
③RTM(Light Resin Transfer Molding又は、Resin Transfer Molding)成形作業
④FRP防水作業
⑤FRP検査作業
⑥FRP塗装作業

(2)周辺業務

①素材(材料)の搬送作業(作業場内)
②製品の梱包・出荷作業

(3)安全衛生業務

必須業務の安全衛生業務と同じ内容です。

使用する素材、材料等

①主材料(ひとつ以上必ず使用します。)
1. 不飽和ポリエステル樹脂
2. ビニルエステル樹脂

②強化材(ひとつ以上必ず使用します。)
1. 無機繊維強化材(ガラス繊維強化材、カーボン繊維強化材等)
2. 有機繊維強化材(アラミド繊維強化材、ビニロン繊維強化材等)
3. 天然繊維強化材(竹繊維強化材、麻繊維強化材等)

③型(ひとつ以上必ず使用します。)
1. 原型(木、石膏、発泡体、粘土、強化プラスチック、これらを組み合わせた型等)
2. 成形型(木製型、強化プラスチック製型、金属製型等)

④プレス成形材料(必要に応じて使用します。)
1. SMC(Sheet Molding Compound: シート状の成形材料)
2. BMC(Bulk Molding Compound: 塊状の成形材料)
3. プリプレグ〔繊維に樹脂を予め含浸せてある成形材料〕

⑤樹脂用副資材(必要に応じて使用します。)
1. 硬化剤
2. 促進剤
3. 遅延剤
4. 離型材
5. 顔料
6. 充填材
7. 難燃剤
8. 揺変剤
9. 消泡剤

移行対象職種・作業とはならない業務例

1. プラスチック成形作業
2. プラスチック発泡成形作業
3. プラスチック研磨作業
4. プラスチック裁断作業
5. プラスチック塗布作業
6. 原料プラスチック処理作業
7. エポキシ樹脂積層防食作業
8. 上記の関連業務および周辺業務のみの場合

まとめ

今回は、外国人技能実習制度の職種になっている
「強化プラスチック成形(手積み積層成形作業)」について解説しました。

強度、軽さの両方を兼ね備えている強化プラスチック。
今後も需要が見込まれており、安定している業界といえるでしょう。

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執筆者
外国人労働者ドットコム編集部

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