技能実習制度

2021年3月16日より、技能実習の職種・作業に
「鉄道施設保守整備」と「ゴム製品製造」が追加されました。
この記事では、「鉄道施設保守整備」について紹介します。

これを読むことで、
鉄道施設保守整備の仕事内容、技能実習制度の概要、実習生受け入れの流れ、技能実習計画の例などを知ることができます。

「鉄道施設保守整備」の仕事

世界一時間に正確で、世界一安全といわれている日本の鉄道。
その鉄道を支え、安全を守っているのが日本の鉄道施設保守整備です。
今となっては私たちの生活に欠かせない鉄道を守る、大きなやりがいのある仕事です。
鉄道は日々、通勤、通学など様々な場面で利用されています。
鉄道施設保守整備は、乗客が安心して目的地まで辿り着けるよう、列車と列車の合間の限られた時間の中で、線路のメンテナンス工事を日々行っています。

【解説に入る前に】鉄道軌道の構造

鉄道軌道は、軌道の上を走る車両からの力を受け止め、
軌道より下部の構造物に伝える役割を持っています。

この軌道は主に以下の3つ、
◯レール
◯まくらぎ
◯バラスト(線路にある砕石)を敷き詰めて作られた道床
で構成されています。

技能実習では、このように構成されている鉄道軌道に関わる技能を修得します。
まずは、日本国内での鉄道施設保守整備の仕事内容を見ていきましょう。

軌道保守整備

車両が安全に走行するためには、軌道を常に良好な状態に保つ必要があります。
車両が日々繰り返して軌道の上を走行すると、線路は少しずつ歪みが生じるため、手入れをしなければなりません。
乗客にとって安全と快適な乗り心地を提供するためには、ミリ単位の精度での整備が求められます。

軌道を整備する仕事は人力により、
タイタンパーという器具や、線路上を走るように改良したバックホウを使用して、
まくらぎ下面の道床を固め、歪んだ線路の整正を行います。

レールの交換

レールは常に車両の車輪と接触しているため、少しずつ摩耗、または傷がついてしまいます。
そのため定期的な交換が必要です。
レールの長さは基本的に1本25mで、それが何本もつながって線路が作られています。
近年は、レール同士を溶接し、200m以上の長いレールにした、ロングレールが主流です。
車両の振動を抑えて乗り心地をよくし、また騒音を少なくするメリットもあります。
そのため、数百メートルもあるレールを一気に交換していく、スケールの大きい作業となります。

まくらぎの交換

まくらぎは、はしご状に敷き並べられた木やコンクリートでできています。
レールを押さえ、左右レールの幅を一定に保ち、列車の荷重・振動を道床に分散させる役割を担う部位です。
破損や経年による腐食が発生するため、定期的な交換が必要です。
まくらぎの交換は、バックホウを使用した作業が主流です。
グリッパー(ハサミ型のアタッチメント)を取り付け、人の手のように器用な作業を行います。

道床の交換

道床は、大きさが4cm程度のバラスト(砕石)が、まくらぎの下に25cm程度敷き詰められて作られています。
レールを支える土台づくりとして、重要な役割を担っています。

砕石は、日々の車両走行により少しずつ劣化しています。
また、風雨などによる影響で土砂が混ざってしまい、クッションの役割をしなくなることがあります。
そのため、定期的に交換する必要があります。
道床交換は、レールを支える土台に関する作業であり、重要な仕事のひとつです。

技能実習の計画では、「バラストを取扱う作業」と表記されています。

分岐器の交換

分岐器とは線路を2方向へ分けるための装置です。
レールが交差する複雑な構造をしているため、線路では一番の弱点といわれており、
交換の頻度が多くなります。
大きな分岐器を大人数により、わずか数時間ほどで交換します。
特殊な分岐器の場合は、数百人規模になる場合もあります。

鉄道施設保守整備での外国人人材の需要

近年、少子高齢化・生産年齢人口の減少が社会問題となっており、鉄道施設保守整備の業界も例外なくこの影響を受けています。

また鉄道軌道の保守作業は重労働かつ深夜帯の仕事であることからも、
若年層が就きづらい仕事となっています。
さらには、アウトソーシング化へのシフト、働き方改革による労働時間制限も重なり、人材不足が深刻になっています。

そのような中、近年多くの業種で見られる「外国人材の受け入れ」が鉄道施設保守整備でも「外国人技能実習制度」として始まります。
この制度は後述の通り、「日本で技能を修得し、母国で技能を移転する」という目的ですが、
日本の鉄道施設保守整備を助ける役割となりそうです。

技能実習制度とは

「技能実習制度」とは、
開発途上国などの外国人が来日し、日本で修得した技能・知識を開発途上国へ移転する制度です。

実際は、日本の人材不足の補填となっているように見られる場面があり、問題視されている実態があります。ですが、本来の目的は「日本から開発途上国への国際貢献」です。

技術移転の流れとしては、まず開発途上国の若者が「技能実習生」となり、日本の企業で就労します。この就労を通して日本の技術・知識を修得し、その技術を母国へ持ち帰り、母国での技術発展に役立てます。
以上のような流れで開発途上国の発展を助け、国際貢献を目指します。
「鉄道施設保守整備」であれば、
軌道検測作業の補助、レール交換作業の補助、まくらぎ交換作業の補助
などの技術・知識を母国に持ち帰ることになります。

この技能実習制度は2010年まで、「外国人研修制度」という名前で運用されてきました。
しかし、目的外の労働の強要・賃金の未払いなど、さまざまな問題が見られ、本来の趣旨である「国際貢献」に反する運用の実態が問題視されていました。

これらの実態をなくすべく制度の再検討を行い、制度の改正を行いました。
この際に、制度の名称が「外国人技能実習制度」となりました。

技能実習生受け入れの流れ

ここでは、技能実習生受け入れの大まかな流れを紹介します。
まず、技能実習生を受け入れてから、事前に作成し監督省庁に提出した実習計画に沿って実習を行います。
「鉄道施設保守整備」の場合、実習期間は最大で5年間です。
技能実習1号、2号、3号へそれぞれの基準を満たすことで移行することができます。

受け入れを行う際の準備はたくさんあります。希望する人材の選定や必要な書類の作成・提出、法令によって定められている講習の実施などがあります。

従業員が少ない企業では、全ての手続きを自社で行うのが難しい場合がありますが、安心してください。
実際、全ての手続きを受入れ機関(企業)が行っているケースはあまり見られません。
「監理団体」と呼ばれる外部の専門機関へ委託することが可能で、中小企業など多くの企業が監理団体に委託して運用しています。
監理団体に委託する場合は、以下の流れで技能実習生を受け入れることになります。

◯ 監理団体に加入
◯ 現地(外国)で面談
◯ 現地で教育(講習など)
◯ 日本へ入国
◯ 監理団体での講習
◯ 受け入れ

技能実習「鉄道施設保守整備」の業務内容

厚生労働省が公開している技能実習計画の審査基準をもとに、
「鉄道施設保守整備」の業務内容を細かく見ていきましょう。

鉄道施設保守整備作用とは、技能実習計画の書面によると、
◯鉄道の軌道を構成する部材を交換する作業
◯鉄道の軌道を規定された構造にするために整備を行う作業
のことをいいます。

技能実習生がこの作業を行うにあたって、注意すべきことが1点あります。

技能実習生が行った軌道保守整備作業の仕上がりについて、
「各鉄道事業者が定める基準を満たしているかどうか」
を確認する有資格者等を配置する体制をとらなければいけません。

ここでいう有資格者等の要件は、以下のとおりです。

「軌道保守整備作業に関して行われる作業の仕上がりを確認する者として、
各鉄道事業者が認めた作業責任者(工事管理者等)」

必須業務

必須業務とは、技能等を修得等するために必ず行われなければならない業務のことです。技能実習生が修得等をしようとする技能等に係る技能検定、またはこれに相当する技能実習評価試験の試験範囲に基づいた内容となっています。

第1号技能実習

(1)軌道保守整備
① 軌道検測作業の補助
1. 軌道検測器具の準備作業

② レール交換作業の補助
1. レール交換作業に必要な器具の準備作業
2. レール交換作業に必要な材料の分別および配置作業

③ まくらぎ交換作業の補助
1. まくらぎ交換作業に必要な器具の準備作業
2. まくらぎ交換作業に必要な材料の分別及び配置作業

④ バラストを取扱う作業の補助
1. バラストを取扱う作業に必要な器具の準備作業
2. 道床形状の形成作業
3. バラスト掘削および埋戻し作業の補助作業

⑤ 保安設備を取扱う作業の補助
1. 保安設備を取扱う作業に必要な器具の準備作業
2. 保安設備を取扱う作業に必要な材料の分別および配置作業

第2号技能実習

(1)軌道保守整備
① 軌道検測作業
1. 軌道検測器具の準備作業
2. 糸張り検測作業

② レール交換作業
1. レール交換作業に必要な器具の準備作業
2. レール交換作業に必要な材料の分別及び配置作業
3. レール交換作業に必要な器具の設置作業
4. レール吊り上げ及び横移動作業

③ まくらぎ交換作業
1. まくらぎ交換作業に必要な器具の準備作業
2. まくらぎ交換作業に必要な材料の分別および配置作業
3. 締結装置の緊解作業
4. まくらぎの撤去および挿入作業

④ バラストを取扱う作業
1. バラストを取扱う作業に必要な器具の準備作業
2. 道床形状の形成作業
3. バラスト掘削および埋戻し作業
4. つき固め作業
5. 通り整正作業

⑤ 保安設備を取扱う作業
1. 保安設備を取扱う作業に必要な器具の準備作業
2. 保安設備を取扱う作業に必要な材料の分別および配置作業
3. 保安設備の撤去および復旧作業
4. 締結装置の緊解作業

第3号技能実習

(1) 軌道保守整備
① 軌道検測作業
1. 軌道検測器具の準備作業
2. 糸張り検測作業
3. 軌間及び水準の検測作業
4. 上記の作業の指導

② レール交換作業
1. レール交換作業に必要な器具の準備作業
2. レール交換作業に必要な材料の分別および配置作業
3. レール交換作業に必要な器具の設置作業
4. レール吊り上げおよび横移動作業
5. レール加工作業(切断・穿孔)
6. 上記の作業の指導

③ まくらぎ交換作業
1. まくらぎ交換作業に必要な器具の準備作業
2. まくらぎ交換作業に必要な材料の分別および配置作業
3. 締結装置の緊解作業
4. まくらぎの撤去および挿入作業
5. 犬くぎ打ち作業
6. 軌間の調整作業
7. 上記の作業の指導

④ バラストを取扱う作業
1. バラストを取扱う作業に必要な器具の準備作業
2. 道床形状の形成作業
3. バラスト掘削および埋戻し作業
4. つき固め作業
5. 通り整正作業
6. 上記の作業の指導

⑤ 保安設備を取扱う作業
1. 保安設備を取扱う作業に必要な器具の準備作業
2. 保安設備を取扱う作業に必要な材料の分別および配置作業
3. 保安設備の撤去および復旧作業
4. 締結装置の緊解作業
5. 間隔の整正作業
6. 上記の作業の指導

安全衛生業務

安全衛生業務の内容は、1,2,3号全て共通しています。

①雇入れ時等の安全衛生教育
②作業開始前の保安機器等の点検作業
③軌道保守整備に必要な整理整頓作業
④軌道保守整備作業用機械および周囲の安全確認作業
⑤保護具の着用と服装の安全点検作業
⑥労働衛生上の有害性を防止するための作業
⑦異常時の応急措置を修得するための作業
⑧危険又は有害な業務に関係する特別教育

関連業務, 周辺業務

関連業務とは、必須業務に従事する者が当該必須業務に関連して行う場合のある業務のことです。修得予定の技能等の向上に寄与する内容とされています。
また周辺業務とは、必須業務に従事する者が当該必須業務に関連して通常携わる業務のことです。

(1)関連業務

①グラインダを使用したレール研磨作業
(当該業務を実施するには、研削砥石作業に係る特別教育を受講する必要があります。)

②軌道用レールボンド溶着作業
(当該業務を実施するには、軌道用レールボンド溶着作業に係る特別教育を受講する必要があります。)

(2)周辺業務

①軌道材料の整理整頓作業
②交換済み軌道材料の集積作業
③交換済み軌道材料の廃棄作業
④軌道材料の運搬作業
⑤工事案内の広報作業
⑥線路沿線環境の整備作業

(3)安全衛生業務

必須業務の安全衛生業務と同じ内容です。

まとめ

今回は、「鉄道施設保守整備」について紹介しました。
鉄道軌道に関する作業の内容、技能実習制度の概要、技能実習計画の内容をお分かりいただけたかと思います。
日本が誇る鉄道整備の技能を世界に広めるためにも、ぜひ運用してみてはいかがでしょうか。

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執筆者
外国人労働者ドットコム編集部

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