技能実習制度

この記事では、技能実習「ビルクリーニング」について解説しています。

ビルクリーニング業の現状、技能実習制度、技能実習「ビルクリーニング」の業務内容などを知ることができます。
この記事を読めば、業界の現状や制度活用のメリットを把握でき、また制度が抱える課題を把握した上で制度の活用に踏み切ることができます。
ぜひ、読んでおきましょう。

「ビルクリーニング」の現状

法務省による関係者ヒアリングの結果(2018年11月7日)を参考に、ビルクリーニング業の現状を見ていきましょう。(対象者: 公益財団法人全国ビルメンテナンス協会)

人手不足の現状について

ビルメンテナンスの業務は大きく分けて3つ。清掃(ビルクリーニング)、設備管理及び施設警備の三大業務とされています。その中でも、1番の人手不足となっているのは、清掃業務(ビルクリーニング)です。

ビルクリーニング業の有効求人倍率の推移によれば、2013年度から2017年度にかけて、「1.60 → 2.95」と倍近くまで上昇しています。ビルメンテナンス協会の会員を対象としたアンケート調査によれば、「現場従業員が集まりにくい」と答えた会員の割合は、2013年から2017年にかけて「59.2% → 87.9%」と上昇しています。日本での最低賃金が上昇している昨今、時給1,000円では人が集まらないと考えられます。女性、高齢者の採用はすでに行っています。

同アンケート調査によれば、女性の占める割合は、54.4%。常勤者における60歳以上の高齢者の割合は、31.8%。パートタイマーにおける60歳以上の高齢者の割合は、60.5%です。これは他業種と比較すると高い数値です。
近年のビルクリーニング業による人手不足の原因は、企業の定年延長やスーパー・コンビニでの就業増加と考えられています。それぞれが、高齢者・女性の採用を難しくしていると考えられます。

人手不足の解消、生産性向上の取り組みについて

人手不足の解消、生産性向上の取り組みについては、以下の4項目が挙げられています。
◯ 数社が任意組合を作り、仕事を受注している。中小企業の場合、一社では人手が不足しており、大規模なビルでの案件などに対応できないため。

◯ 人材確保に向けての労働条件の配慮。24時間営業の年中無休の複合ビルの清掃を行う場合であっても、シフトの管理によって従業員の休日を設けるようにするなど。

◯ 非常に広い床面は自動洗浄機を使用するなど、ロボット化を進めている。しかし、トイレや階段など、人の手でしか清掃できない箇所も多く、普及が進んでいない。

◯ 給料アップ。健全な経営がなされていなければ業界の発展はなく、優秀な働き手を確保するには給料をアップさせることが重要であると考えている。そのため、顧客に対して契約金額の改定を促すチラシを協会が作成し、会委員から顧客に配布するなどの取り組みを業界全体で行っている。

今後の業界の発展性について

ビルクリーニング業界の仕事が減ることはないと考えられています。
近年、
・ホテルを中心とするメンテナンスが必要となる建物
・ホテル、アミューズメント、オフィスなどを複合化した24時間稼働の、メンテナンスに多くの人手を必要とする建物
が増加していることが理由です。

今後、大不況となった場合でも、建物がなくなるわけではないので、仕事がなくなることはないと考えられます。
災害時などの際でも、業務を継続して遂行することが求められています。

技能実習制度とは

技能実習制度とは、
主に新興国の若者が日本の技術を習得し、その技術を母国へ持ち帰る制度です。
新興国の若者が日本企業での労働を通して、日本の高い技術を学びます。そしてその技術を母国に持ち帰り、母国の発展を目指します。

技能実習制度を通して、実習生の母国を発展させられる人材を育成し、国際貢献を目指します。
「ビルクリーニング業」であれば、現場で学んだ整備作業・安全衛生作業を母国に持ち帰ることになります。

この技能実習制度は2010年まで、「外国人研修制度」という名前で運用されてきました。しかし、本来の趣旨に反する運用、目的外の労働の強要・賃金の未払いなど、さまざまな問題が起きていました。
これらの問題に対して制度の再検討を行い、制度の改正を行いました。この際に、「外国人技能実習制度」となりました。

技能実習生受け入れの流れ

ここでは、技能実習生受け入れの大まかな流れを紹介します。
まず、技能実習生を受け入れてから、事前に作成し監督省庁に提出した実習計画に沿って実習を行います。

実習期間は職種によって異なっています。
技能自習1号、2号、3号へそれぞれの基準を満たすことで移行し、最長5年間にわたって実習をすることができます。

受け入れを行う際の準備は多いです。希望する人材の選定や必要な書類の作成・提出、法令によって定められている講習の実施などがあります。

従業員が少ない企業の方は、
「うちでは、こんなに多くの手続きはできない…。」
と思われるでしょう。

ですが、安心してください。
全ての手続きを受入れ機関(企業)が行っているケースは少ないです。
監理団体という外部の専門機関へ委託することができ、中小企業など多くの企業が監理団体に委託して運用しています。
監理団体に委託する場合は、以下の流れで技能実習生を受け入れることになります。

◯ 監理団体に加入
◯ 現地(外国)で面談
◯ 現地で教育(講習など)
◯ 日本へ入国
◯ 監理団体での講習
◯ 受け入れ

外国人技能実習生を受け入れるメリットとは

ビルクリーニング業は、2016年4月1日から技能実習の対象職種となりました。
これによって業界にもたらされるメリットを紹介していきます。

企業内活性化

「技能実習によって技能を修得する」という明確な目的意識を持った外国人技能実習生が現場で従事してくれます。技能修得の意欲が旺盛なため、意識的な作業となり、大幅な作業効率向上につながるでしょう。

国際貢献

技能実習生は、仕事での技能・知識を学ぶだけでなく、日本の文化や日本語も学びます。受入れ企業で学んだ事を活かし、実習生による母国への貢献につながります。
企業としては、技能実習生を受け入れることで、「国際的な企業」「国際貢献の社会的使命を果たしている」というイメージがつきます。

人材確保

3〜5年間ほどの定められた期間内は、技能実習生に継続して働いてもらうことができます。政府が定めている技能実習制度での受け入れが可能な職種・業種には、人手不足が深刻化しているものが多いです。技能実習制度を積極的に活用することで、活発な営業活動を行うことができるでしょう。
パート採用の応募を待つだけでなく、技能実習制度を積極的に活用してみるのはいかがでしょうか。

採用リスクを抑えられる

国内で新規採用を行うべく、求人広告、採用マージン、採用後の教育費をかけても、1〜2年ほどで仕事を辞めてしまうケースが多くあります。これに対して、外国人技能実習生の受け入れは、3〜5年と期間は決まっていますが、国内の新規採用よりもリスクが少ない雇用ができると考えられます。

外国人技能実習制度の活用は国内での採用と同じように、書類作成などの手間がかかります。ですが、募集・選抜・教育は送り出し機関や監理団体が行ってくれます。実習生が教育された状態で現場に来てくれるので、採用リスクが抑えられます。

作業工程の見直しにつながる

技能実習生を受け入れる際、現場での作業工程の確認、マニュアル化、基本ルールを作る必要が出てきます。技能実習生の受け入れをきっかけに、従来の作業工程・ルールを見直すこととなり、作業効率改善につながるでしょう。この改善は、従業員のモチベーション向上にもつながると考えられます。

技能実習制度の課題

技能実習制度を円滑に活用するため、制度が抱えている課題を把握しておきましょう。

制度への理解

技能実習制度の目的は、外国人の実習生が日本で技術・知識を身につけ、母国の産業発展につなげることです。

しかし、受入れ企業は人手不足を解消するための手段として捉えている場合があります。
制度の趣旨を理解し、技能実習生にしっかりと教育をし、権利を尊重して制度を活用しましょう。

賃金の低さ

前節に付随した内容です。
技能実習制度の趣旨を理解していないがゆえに、外国人技能実習生を劣悪な労働環境のもとで働かせている場合があります。
中でも、賃金の低さとして、日本人の従業員よりもかなり低い賃金しか与えないケースがあります。本来、日本人の従業員と同等の賃金にしなければいけません。注意しましょう。

労働環境の違い

技能実習生に取って、日本の文化や慣習は経験したことのない全く新しい環境です。なので、戸惑いを示すことがある可能性があります。それに伴い、受入れ企業の従業員にとっても、外国人実習生の価値観や慣習は新しい経験となり、戸惑うことがあるかもしれません。

他にも、言葉が通じないなどのことがあるかもしれません。ですが、このようなことがあっても「イライラ」しているような態度をせずにゆっくりとコミュニケーションを取っていくことが必要です。
外国人を受け入れる姿勢を企業全体でもてば、外国人労働者の定着率アップ・国際貢献のイメージアップにつながるでしょう。

技能実習の「ビルクリーニング」の業務内容

業務の定義

ビルクリーニングの業務は、不特定多数の利用者が利用する建築物(注1)の内部を対象に、清潔さを維持する作業を行います。
場所、建材、汚れなどの違いに対し、方法、洗剤および用具を適切に選択して場所別および部位別(注2)の清掃作業(注3)を行い、建築物に存在する環境上の汚染物質を排除します。

業務の主な目的は、以下の3項目です。
◯ 衛生的環境の保護
◯ 美観の維持
◯ 安全の確保および保全の向上

(注1)住宅(戸建て、集合住宅など)を除く建築物をいいます。
(注2)場所別とは、玄関ホール、通路、トイレ、昇降機、専用部等の区分をいい、部位別とは、床、壁面、天井、立体面等の区分をいいます。
(注3)清掃作業のうち、日常清掃作業は、毎日1回以上などの頻度で行う作業をいい、定期清掃作業は、年または月などの単位で定期的に行う作業をいいます。

※ 当該職種・作業で技能実習を実施する場合、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)第12条の2第1項に掲げる登録業種のうち、第一号の 「建築物清掃業」または第8号「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受ける必要がある。

技能実習1号(必須業務)

1の(1)(2)並びに2の作業を必ず行います。1の(3)の作業は必要に応じて行います。

1. ビルクリーニング作業
(1) 作業の段取り
◯ 器具および資材の取扱および整備作業
◯ 什器および備品などの取扱作業

(2) クリーニング作業
クリーニング業において使用する器具および資材の使い方を習得するための各種清掃作業の補助

(3) ベットメイク作業
ベットメイク作業

2. 安全衛生作業
以下の10項目です。
◯ 雇入れ時などの安全衛生教育
◯ 作業開始前の安全確認作業
◯ 整理・整頓・清掃・清潔・習慣の遵守
◯ 作業者間の安全確認作業
◯ 保護具および安全標識・装置の確認作業
◯ 服装の安全点検作業(身だしなみ含む)
◯ ビルクリーニングにおける自己・疫病予防
◯ 労働衛生上の有害性を防止するための作業
◯ 以上時の応急措置を習得するための作業
◯ 報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)の遵守

技能実習2号(必須業務)

1の(1)(2)並びに2の作業を必ず行います。1の(3)の作業は必要に応じて行います。

1. ビルクリーニング作業
(1) 作業の段取り
◯ 資機材(器具、資材および機械)の取扱および整備作業
◯ 什器および備品などの取扱作業

(2) クリーニング作業
◯ 日常清掃作業(トイレ日常清掃作業を除きます。)

(3) ベッドメイク作業
◯ ベッドメイク作業

2. 安全衛生作業
技能実習1号と同じ内容です。

技能実習3号(必須業務)

1の(1)(2)並びに2の作業を必ず行います。1の(3)の作業は必要に応じて行います。

1. ビルクリーニング作業
(1) 作業の段取り
◯ 資機材の取扱および整備作業
◯ 什器および備品などの取扱作業

(2) クリーニング作業
◯ 日常清掃作業
◯ 定期清掃作業(トイレ定期清掃作業を除きます。)

(3) ベッドメイク作業
◯ ベッドメイク作業

2. 安全衛生業務
技能実習1号, 2号と同じ内容です。

関連作業・周辺作業

必須作業に関連する技能などの修得にかかる作業などで該当するものを以下から選択します。

(1) 関連作業
◯ 資機材倉庫の整備作業
◯ 建物外部洗浄作業(外壁、屋上など)

(2) 周辺作業
◯ 建築物内外の植栽管理作業(潅水作業など)
◯ 資機材の運搬作業(他の現場に移動する場合など)
◯ 客室等整備作業(ベッドメイク作業を除きます。)

(3) 安全衛生作業
技能実習の安全衛生作業と同じ内容です。

まとめ

今回は、技能実習「ビルクリーニング」の業界の現状、技能実習制度について、業務内容、技能実習制度の課題について解説しました。

技能実習生の受入れをお考えの事業者の方は、
制度の趣旨を把握し、制度を活用してみてはいかがでしょうか。

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執筆者
外国人労働者ドットコム編集部

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